戸建相続で取得した建替えができない戸建の持分だけを買い取ってほしい!(再建築不可物件・横浜市保土ヶ谷区)
ご相談者: | T.A 様(ご来店のお客様) 神奈川県横浜市保土ヶ谷区 |
昨年、母が他界し、姉と二人で遺産分割協議をしました。
それまでは、仲が良く、良好な兄弟関係でしたが、遺産分割で兄弟間の意見の相違が理由で揉めてしまいました。
それ以来、兄弟間での連絡が一切できない状況になってしまいました。
そして、相続後、母が住んでいた戸建を共有(各持分1/2)で相続をしてまったのです。
姉とも連絡がとれず、売るに売れず、貸すに貸せず、という状況の中、姉だけ自分が所有していた戸建の持分2分の1をわけのわからない法人に売却してしまったのです。
私としては、私が持っている持分2分の1についてわけのわからない法人と直接交渉をしたくないため、持分を売却し、姉との関係も解消したいと思います。
複数の不動産会社に相談しましたが、まず接道状況に問題があり、再建築ができないことで断れて、さらに持分だけの売買ということでご対応していただけるという不動産会社は1社もありませんでした。
何とか御社のほうで助けていただけないでしょうか。
状況
・駅から坂を上がったところにある土地
・接道状況に問題があり、再建築ができない
・建物の裏には崖がある
・土地及び建物の持分だけの売買
・境界標が不明
・室内には残置物が散乱
・建物はかなり老朽化しており、大規模修繕が必要
解決策
1. お客様との打ち合わせ
お客様より「不動産の持分の処分について困っているので相談にのって欲しい」とのご連絡をいただいてから、すぐにお客様と面談日を決め、早々にお会いし、打ち合わせをしました。
その際にお客様は「複数の不動産会社より持分だけの売買や建替えができない物件はうちでは扱えない」と言われ、途方に暮れていました。
それに加え、「相続で姉と揉めてしまい、今では口もきいてもらえないし、一切姉の顔も見たくない」と。
お客様の抱える不動産の問題は、一刻も早く、建替えができない戸建の持分を処分し、お姉さんと兄弟関係を解消するというものでした。
条件は、煩わしいことは一切なしで、持分だけを処分(売却)することでした。
2. 物件調査と現地確認
お客様との面談後、すぐに市役所等で建築基準法、都市計画法、その他法令に基づく制限について調査を実施。
所有権(持分だけということ)、接道状況にのみ大きな問題がありましたが、他の点においては特にトラブルに発展するようなことは見受けられませんでした。
現地調査では、お隣との境界標が不明な部分が多かったこと、建物内に大量の残置物があったことが判明しました。
3. 持分のみの売買契約の締結
物件調査も終え、再度、お客様と今後の方針について、協議をし、最終的には今回のお客様がご所有されている持分2分の1だけを当社で購入(買取)させていただくことで合意しました。
そこで契約書の案文を作成にかかりました。
この時のポイントは、売買時、売買後も一切お客様に負担がかからないようにすること。
そのため、契約書の特約内容に「瑕疵担保責任免責」(何か問題があっても、売主様は一切の修復責任・賠償責任は負いませんというもの)、「設備の修復義務免責」(設備が壊れていても、交換・補修はしませんというもの)、「残置物そのまま」(残置物はそのままでその所有権だけを放棄し、当社側にて勝手に処分していいですよ、というもの)、「境界非明示」(測量はせずに、境界標がないところは新規に境界標の設置をせずに現状のままでの売買)状態等を記載しました。
そして、予めお客様に契約書の内容をご確認いただき、後日、お客様と当社の間で持分のみの売買契約を締結しました。
4. 所有権移転と事前通知
売買契約の締結をし、お客様に売買代金をお支払いさせていただきました。
そして、所有権移転登記というところでお客様が相続後に登記識別情報通知(昔で言う権利証)を紛失されてしまっていたため、今回の取引きについては、「事前通知」という制度にて所有権の移転登記を行うことにしました。
まず、不動産の所有権を移転するためには、原則として登記済権利証または登記識別情報通知と売主様の印鑑証明書が必要となります。
もし、売主様がこの登記済権利証・登記識別情報通知のいずれも紛失されてしまった場合には、その不動産の所有権を移転するためには2つ方法のどちらかしかありません。
1つは、司法書士の先生に本人確認(売主様がこの人で間違いないですよという証明)をしていただくというもの。
もちろん、そのための費用が別途必要となります。
そして、もう1つは今回のように「事前通知」というもの。
今回は、売買代金をお支払いした後、売主様と一緒に登記手続きの窓口である管轄の法務局に赴き、所有権移転を申請するというもの。
ただ、前述のとおり、売主様が登記識別情報通知を紛失されていたため、後日、法務局よりお客様のご自宅(印鑑証明書の住所地)にハガキが送られ、それを再度、法務局に提出し、所有権移転申請をしました。
後日、無事に今回の不動産の所有権が売主様より当社に移転することができました。
そもそもなぜ、司法書士の先生の本人確認ではなく、事前通知にしたかについては、まず当社での融資利用がなかったため(融資利用があり、抵当権の設定がされる場合には、金融機関の関係でこの事前通知での所有権移転はできません)、かつ、事前通知による所有権移転の方が、売主様の本人確認費用を抑えることができるためでした。
5. 近隣挨拶と弁護士の先生との協議
物件取得後は、私のほうで近隣住民の方に「持分だけを購入した新しい所有者です。何かあればご連絡ください」とご挨拶に伺いました。
その際にお隣の方より物件の水道管が敷地内の地中を通過しており、地下で漏水しているから何とかしてほしい、雑草がすごく、虫が飛んでくるのできれいにしてほしい旨のお話をいただきました。
そのため、すぐに除草作業を行い、水道については水道業者とお隣さんと現地において一緒に立会いをし、協議しました。
当社としては、持分だけしか所有していないため、売主様同様、この戸建全部を貸すことも、売ることも、使用することもできません。
また、売主様のお姉さんがその持分を売却された法人をインターネットで検索してもほとんど情報がでてきませんでした。
そこでこの不動産の処分方法について、当社の弁護士の先生とお会いして協議を重ねました。
そして、具体的な手続きに入っていったのです。
6. 訴訟による売却活動の実施
前述のとおり、今回の物件は建替えができず、持分2分の1を当社と他の法人で共有し合っている状態でした。
そのため、弁護士の先生に依頼をし、持分2分の1を所有している法人に対し、訴訟を開始しました。
詳細はかなり専門的な内容となってしまうため、ポイントだけ言うと「共有物の分割請求」というものでした。
これは、裁判所の判断で当社が所有している持分と法人が所有している持分についての処分方法を決めるもので、今回は、当初の計画通り、際場所の通知は「競売で売却実施」というものでした。
※裁判所での処分方法はケースバイケースとなります
7. 落札者の決定(処分の完了)
弁護士の先生と裁判所で競売手続きを粛々と進めていただきました。
1回目の競売の開札結果は、驚くほど高額な金額での法人の入札がありましたが、残念ながら破談となってしまい、2回目の競売にて買受人が決定しました。
そして、その開札金額は建替えができず、境界標も一部なく、残置物がある状態でしたが、750万円弱という金額でした。
最終的に処分できるまでには約2年という時間とそれ相応の費用がかかりました。
担当者からの一言
今回の案件のポイントは、「相続トラブル」でした。
もともと仲が良かったお客様とお姉さんでしたが、お母様が他界され、相続が発生し、遺産分割の協議によって兄弟関係が悪化してしまいました。
実際、こういったことはたくさんあります。
お互いに誠意をもって、譲り合いの精神で協議をすれば、仲がいい関係が続けられたのかもしれませんが、そこは残念で仕方がありません。
今回の案件については、売主様とお姉さんがその所有していた持分2分の1ずつを一緒に売却できれば、数百万円という金額になっていたのに、兄弟関係の悪化により、それができませんでした。
そう考えると相続で不動産を取得される場合には、「共有にしないこと」、これが重要なポイントとなります。
もし、相続不動産を共有で取得し、揉めてしまった場合、ヒントは…「共有物の分割請求」です。
せっかく何十年もともに生きてきた家族。
相続で揉めてしまい、家族がバラバラなんて考えたくもありません。
相続が「争続」にならないように前もって家族みんなで相続について話し合うこと、それが揉めない相続、つまりは「想続」となるのです。
関係者のみなさま、本当にありがとうございました。