土地田舎の農業振興地域内の農地と分家住宅の処分を手伝っていただけないか!(愛知県知多郡)
ご相談者: | N.T 様(税理士法人からのご紹介) 東京都新宿区 |
私の顧問先のお客様で知多半島の先(愛知県知多郡南知多町)に相続で
不動産を取得され、困っている方がいます。
大手不動産会社に頼んでも対応できないと言われてしまいました。
農業振興地域の農地と分家住宅のため、買ってくれるかわかりませんが、
何とかすべてを処分してください。
状況
・農地4物件、戸建1物件(分家住宅)の全て手放したいという
売主様のご意向
・各不動産の現場がどうなっているか、どのような公法上の
制限がかかるか調査する必要がある
※特に戸建は農家の分家住宅のため、現状のままでは
第三者の利用ができませんでした
・各不動産が所在する地域での不動産需要・動向を
リサーチする必要がある
※市街化調整区域内、かつ農業振興地域内の農地は
原則購入できる方が農業従事者に限定されてしまいます
・売主様に万が一のことがあっても、病気がちなお子様が
安心して暮らしていけるように今のうちに準備して
おきたい
解決策
1. 物件の調査と現場確認
税理士法人のご担当の方とご一緒に売主様と面談をし、正式に知多半島の
5つの不動産の処分のご依頼をいただきました。
売主様はお子様が病気がちのため、「手続きが煩わしい不動産は1つも相続
させたくない、その前にすべてを処分したい」というご意向でした。
売主様との面談後、物件の現場確認と公法上の調査を実施。
農地4物件は地番はわかるものの、周囲も全て農地のため、場所の特定から
始めました。
各調査をした結果次のとおりでした。
農地①:農業振興地域内で農地以外への転用ができない
第三者に貸している
※農地法の許可が必要、愛知用水・土地改良区に届出が必要
農地②:農業振興地域内で農地以外への転用ができない
誰かが雑草等の除草をしている
※農地法の許可が必要、愛知用水・土地改良区に届出が必要
農地③:農業振興地内で農地以外への転送ができない
※農地法の許可が必要、愛知用水・土地改良区に届出が必要
農地④:市街化調整区域の土地で分家住宅の裏側
※農地法の許可が必要
戸建:市街化調整区域の分家住宅のため、現状の何もしない状態では
第三者が建物を利用することも、その土地に建替えをすることも
できない。
2. 取引き相場のリサーチと販売活動の実施
物件調査後、各物件が一体いくらで売却が可能か売主様にお伝えできるように
周辺相場・需要・動向をリサーチしました。
まず不動産会社専用検索サイトをチェック。
愛知県知多郡南知多町では成約登録がされていませんでした。
その他、不動産会社用サイトを調べても周辺の成約事例がなく、市街化調整区域のため、路線価も公示地価もありませんでした。
そして、いつもお世話になっている不動産鑑定士の先生に簡易査定を依頼し、
不動産鑑定士の先生だけが閲覧できるサイトでも市場性をチェックしていただきました。
地元の不動産会社に問い合わせをしようとしても、そもそも不動産会社自体がありませんでした。
不動産の需要についても、地域的に農家の方が多く、高齢化が進んでいるため、わざわざ買ってまで農業を拡大する方はいない地域でした。
戸建についても代々受け継いできた家があるため、新しくマイホームを購入しようとする方はほとんどいないという状況でした。
そのため、お調べし、わかったことを全て売主様にお伝えし、各物件の金額にご納得いただいた上で販売活動を開始しました。
3. 農地①(市街化調整区域内農業振興地域の土地)の売却
農地①は第三者に農業委員会の許可を取得して第三者に賃貸していたため、
まずはその賃借人の方を訪問し、農地①の購入のご意向があるかどうかをご確認させていただきました。
当初は、「借りているだけでいい。買いたくはない。」というお話をいただきました。
ただ、それでは物件①の売却はできませんし、賃借人の方が幸いにも農業法人だったため、農地法の許可も取得できることもあり再三、再四、農業法人の代表者の方にご購入いただけるようお願いしました。
最終的には、私の努力も報われ、その農業法人に農地①をご購入いただくことができました。
売買契約締結後は、行政書士の先生にお願いをし、農地法の許可の取得をし、無事にお引渡しをすることができました。
※市街化調整区域の農地を売買する時には、農業委員会の許可がないと物件の所有権
移転登記ができません
※農地法の許可を取得する場合には、売主様と買主様が他に所有している不動産に
農地法の許可を取得せず転用していないかどうかも審査されます
4. 戸建と農地②~④の売却
戸建は、もともと農家の分家住宅で建築されていたため、売買時買主様が
建物を使用できるように用途変更する必要がありました。
そのために行政書士の先生に依頼し、「都市計画法の許可」を取得することに
なりました。
※都市計画法の許可が取得できれば、買主様は建物を使用することも、建替え
することも可能となります
この許可が取得できるかどうかの基準は、売主様が今までしっかりとその分家住宅を管理してきたかどうか、買主様がその分家住宅を自己居住用とし、他に不動産を所有されていない、そもそも分家住宅を取得する理由等も影響してきます。
行政書士の先生に開発許可の窓口の方と打ち合わせをしていただいた結果、
土地の測量が必要となり、土地家屋調査士の先生に依頼、建物の図面を作成
する必要があり、建築士の先生に依頼しました。
分家住宅については、インターネットより多数のお問い合わせをいただき
ましたが、都市計画法の許可が厳しく、購入できる方がいらっしゃいません
でした。
農地は、お問い合わせが少なく、少ないお問い合わせの中でも農地法の
許可(農業従事者等)を取得できる方はいませんでした。
そのため、私の方で各農地の隣接地の所有者を調査し、その所有者の方の
ご自宅を訪問し、農地を取得してほしい旨お伝えしましたが、みなさん、
ご高齢の方で「逆にうちの農地を引き取って欲しい」と具体的なお話には至りませんでした。
そして、売主様よりご紹介いただいた地元の方の口利きで「戸建を探していて、物件を拝見しました。ぜひ欲しい。」という方が現れました。
その方のご親戚が戸建の隣接地でかつ、農業従事者ということもあり、
戸建部分をお客様にご購入いただき、農地部分をご親戚の方にお引き受け
いただくことができました。
売買契約締結後都市計画法の許可申請をし、約6か月後に無事に許可の
取得ができ、全ての物件を買主様とご親戚の方にお引渡しすることができました。
※農地法の許可も問題なく取得できました
5. お子様の将来の保全
不動産をご売却いただき、その後の残る課題、それは売主様が万が一のときに
病気がちなお子様が安心して暮らしていけるように準備しておくことです。
そのため、民事信託に詳しい司法書士の先生をご紹介させていただき、
将来のことをお打ち合わせいただきました。
最終的には「遺言による信託」という方法で万が一、売主様に何かあっても
お子様が安心・安全に暮らしていけるような「将来の保険」をかけていただきました。
※今回は遺言による信託ですが、もし、この手続きを行っていなかったら
売主様に万が一のことが起こってしまった場合、お子様の生活が大変な
ことになってしまったと思います
担当者からの一言
今回の案件、都市計画法の許可と農地法の許可がポイントとなりました。
いずれも審査が厳しく、特に都市計画法の許可関係は大変でした。
最終的な買主様とのお引渡しの前、売主様と一緒に現地を確認しました。
現地から立ち去る際に売主様が母屋に向かって深々をお辞儀をされていたことが
とても印象的でした。
売買代金の授受の際に売主様と買主様が初めてお会いされ、お話をされて、
売主様より「良い方にお譲りできて、とても嬉しいです」と。
買主様より「初めてのマイホーム。大切に使わせていただきます」と。
そして、お引渡しをした日が亡くなったご主人様の命日ということもあり、
とても強いご縁を感じました。
偶然ではなかったのかもしれません、売主様と買主様のご縁は。
帰りに売主様をホテルにお送りする車中、ルームミラー越しに見えた
売主様が目に涙を浮かべていたことがとても、とても印象的でした。
きっとご主人様とのたくさんの想い出のつまった不動産を
とても良い買主様にお求めいただくことができたこと、全ての
不動産を手放せたことでお子様が不動産を相続する心配がなくなった
ことでご安心されたのでしょう。
今回の案件は、誰でもできる案件ではありませんし、相場がないところに
相場をつくることができたこと、最後に買主様より私に「これからの新しい
生活に向けてがんばっていきたいと思います」というメールをいただけたこと、
難易度はかなり高い案件でしたが、その分、たくさんの方とお会いし、たくさんの
経験を積むことができました。
そして、私は遠くから買主様を応援します。
お引渡しまでに司法書士の先生、土地家屋調査士の先生、行政書士の先生、
建築士の先生、信用金庫の担当の方にご協力いただきました。
関係者のみなさま、本当にありがとうございました。