戸建売りづらい市街化調整区域の農地と古家をすぐに買い取って欲しい!(横浜市青葉区)
ご相談者: | 大手不動産 様 神奈川県横浜市青葉区 |
私のお客様で横浜市青葉区にお住いの方がいらっしゃいます。
そのお客様は市街化調整区域の戸建にお住いです。
ただ、ご高齢のため、お庭を含めたご自宅の維持管理が大変になり、駅近くのマンションへのお住み替えを希望されております。
先日、お客様とお打ち合わせをし、お住み替え先もある程度目途がついてきましたが、ご資金繰り的にご自宅が必須となります。
そこで複数の複数の不動産買取会社に相談しましたが、市街化調整区域内のため、みなさん、後ろ向きで、更に農地もついてきてしまっているため、ほとんどの会社から「買えない」と言われてしまいました。
市街化調整区域を多数取り扱っている御社で何とか買い取っていただけないでしょうか。
状況
・駅からは徒歩4分
・周辺道路が狭く、前面道路の幅員は約2.5m
・市街化調整区域にあり、周辺には田畑が点在
・敷地内に崖・井戸がある
・敷地の一部が農地となっている
・建物は老朽化しており、登記もされていない
・埋蔵文化財包蔵地内
・土地面積820㎡
解決策
1. 担当者との打ち合わせ
担当の方より「他社で断られた市街化調整区域の古家付きの土地を買い取って欲しい。その土地には農地部分もあり、他社では買い取れないと言われて困っています。お客様のお住み替えを実現させるためにも御社にて買い取っていただけないか?」との相談があり、資料をいただきました。
不動産会社の買取再販事業は、ほとんどの会社が金融機関よりプロジェクト融資を受けて、事業を行います。
このとき、その土地が今回のように市街化調整区域の物件の場合、その時点で金融機関の評価額は低くなってしまいます。
言い換えるとその時点で買いづらい物件となってしまうのです。
今回の案件は、さらに農地部分があること、各種許認可が必要なことからも他社さんでの事業化は難しかった要因となります。
当社においては、そういった難あり物件でも購入できる資金スキームがあります。
2. 現地確認の実施
ご相談をいただいてからすぐに現地確認に行きました。
物件は駅から近く、東急こどもの国線の電車の音が聞こえるくらいのところでした。
周辺には田畑が広がり、道路は幅員3m未満で車が1台通るのもやっとのところで、物件は崖の上にありました。
農地部分については、売主様が以前家庭菜園と使用されていましたが、やはり維持管理が大変なのか、荒廃していました。
3. 役所調査の実施
現地調査の後に市役所等で建築基準法、都市計画法、その他法令上の制限について、調査しました。
その際に注意して調査した点は3つありました。
1つは、市街化調整区域は、原則として建物が建てられないため、当社で購入した後に建物の建築ができるかどうかでした。
これについては、窓口の担当者より市街化調整区域に指定(線引き)されたときに宅地として使用していた部分については、建物の建築が出来る旨の見解をもらいました。
ただ、「市街化調整区域に指定された時に宅地として使用していた部分」がどこまでかによって分譲する際の区画数も変動してしまい、事業計画が成り立たなくなってしまう可能性もありました。
そのため、設計会社と協議をし、閉鎖謄本、市街化調整区域に指定されたとき、それ以前の航空地図等でどこまでが宅地なのかを窓口担当者とすり合わせをしました。
2つ目は、土地の面積が820㎡あり、かつ、擁壁の築造、つまりは土地の区画の形質変更を行うには、都市計画法の開発許可、宅地造成等規制法の許可が必要でその許認可が取得できるかどうかでした。
この都市計画法の開発許可については、前面道路が狭いことが理由となり、窓口担当者より開発許可の取得ができない旨の回答をいただきました。
そのため、再度、設計会社、市役所担当者と「どうしたら、前面道路が狭くても土地の形質変更等の工事ができるのか」を協議を行い、ある解決策を見つけることができたのです。
3つ目は、庭先の農地部分の農地法の許可についてでした。
市街化調整区域の農地を売買する時には、農地法の許可がないと所有権移転ができません。
今回は、土地の一部に農地部分があるため、農地法の許可が必要でした。
農地法の許可は農業委員会のほうで許可をするのですが、これが市街化調整区域の農地の場合は、審査が厳しく、農地転用(農地から他の用途に変更すること)が認められない場合も多々あります。
これについても、設計会社と農業委員会と一緒に協議をし、うまく調整することに成功しました。
4. 売買契約の締結と各種作業の開始
今回の案件は、かなり難易度が高い物件だったため、事前に大手不動産会社の担当者経由にて売主様との契約書の特約条項をよく打ち合わせさせていただきました。
そして、後日、大手不動産会社の事務所にて当社が買主となった売買契約を締結しました。
契約締結後、すぐに測量を開始。
道路の査定(確定)、隣地との境界確定をし、土地が隣地及び道路の高低差があったため、高低測量も実施しました。
測量の結果、道路部分(セットバック部分)、建物が建てられない宅地部分の面積がかなりあることが判明したのです。
その他、都市計画法の開発許可申請、宅地造成規制法の許認可申請、農地についての協議も継続して行っていきました。
5. 農地部分の対応
市街化調整区域の農地部分の売買には農業委員会の許可が必要となること、その審査基準がかなり厳しいことは先ほども記載させていただいた通りです。
それでも売主様の目的は「農地部分も含めて全て売却すること」でした。
そのため、設計会社と多角的な物件調査をした結果、農地部分は農地として使用してきたのではなく、庭先で使っていたということで農地法の許可に替えて、非農地証明書の申請を行いました。
この非農地証明書は、農地でないことの証明であるため、これが取得できれば、農地法の許可を取得する必要がなくなります。
そして、調査資料を農業員会に提出をし、無事に非農地証明書を取得することに成功しました。
続いては、この非農地証明書があるから、所有権移転時に許可がいらない、というわけではないため、この非農地証明書をもとに農地部分の地目変更登記(宅地に)を行いました。
そして、この地目変更登記の完了をもって農地から除外され、所有権移転の際に農地法の許可が不要となったのです。
ただし、宅地に変更したもともと農地部分については、市街化調整区域に指定された当時も家庭菜園として利用されていたため、宅地ではあるものの、建物を建築することができない宅地という扱いのものになりました。
6. 宅地造成等規制法の許可申請と開発許可
農地部分を宅地に変更した後は、土地面積が820㎡と500㎡を超えていたため、都市計画法の開発許可の取得の有無について市役所担当者と打ち合わせを実施しました。
最終的には、土地の形質変更などの開発行為を行おうとしても前面道路が狭く、開発許可の取得ができない土地でした。
そのため、市役所の窓口の担当者と協議をし、土地の形質変更をせずに、かつ、開発許可の取得が不要な方法で進めることにしました。
ただ、それでも分譲するために崖部分に擁壁を設置する必要があったため、宅地造成等規制法の擁壁の許可については取得しました。
そして、設計会社に許可申請を行っていただき、後日、無事に宅地造成等規制法の許可の取得が出来ました。
7. 仕入れの残代金と各種作業の実施
農地部分の問題、都市計画法・宅地造成等規制法の許可の課題をクリアしたところで、売主様に残代金をお支払いをし、所有権を譲り受けました。
そして、更に手続きを進めていったのです。
まずは、建物の解体工事・造成工事に入る前に近隣の方を訪問。
「工事期間中ご迷惑をおかけします」というご挨拶と「ゴミ置場を使わせていただけないでしょうか」というお願いでした。
その際に敷地のすぐ南側に防空壕があることが発覚しました。
次に行ったことは、敷地内に井戸があったため、お祓いをし、埋め戻ししました。
8. 行政との協議と固定資産税の減額申請
物件が埋蔵文化財包蔵地として指定されていたため、建物の解体工事、造成工事に入る前に教育委員会立会のもと、試掘を行いました。
この試掘の結果、何ら問題もなく、工事に入れることになりました。
建物の解体工事に取り掛かると地中より以前使用されていた大型の浄化槽がでてきてしまいました。
本来であれば、売主様にご負担いただき、撤去するのですが、今回に限っては仲介していただいた担当の方と過去に何回もお取引きさせていただいていたため、その地中障害については、当社にて処理・解決しました。
古家の解体工事の後に土地の造成工事に着手。
そして、当社が購入した後に県税事務所より不動産取得税の納税通知書が届きました。
当初届いた不動産取得税の請求額は、101万円でした。
この101万円には道路後退部分の面積、建物が建てられない宅地部分の面積についても建物が建てられる土地という前提で課税されていたのです。
そこで県税事務所と打ち合わせをした結果、最終的に不動産取得税を40万円以上も減額することに成功しました。
同時に固定資産税についても区役所固定資産税と打ち合わせをし、当初54万円の固定資産税を36万円に減額することに成功したのです。
9. 宅地造成工事の検査済証の取得と販売活動の実施
物件は、高低差があるところで最大4~5m前後あったため、土地の造成工事に時間がかかりました。
それでも何とか無事に工事を完了させることができ、行政からの工事のお墨付きである「検査済証」の取得をしました。
当初は、未公開にて販売を行っていましたが、造成工事も終わり、雰囲気が明るくなったところで情報公開をし、当社が売主となり、積極的に土地の売却活動を行いました。
建物の建築ができる土地3区画と建物が建てられない土地1区画の合計4区画での分譲となりました。
建物が建てられない土地については、ターゲットを家庭菜園として利用する方と想定していたため、他区画の土地を通過して、水道管の引込みをしました。
そして、その水道管の引込みについての権利を保全するために地役権の設定登記を行いました。
10. 土地の売却と事業完結
土地の販売活動を開始し、大手不動産会社、地元不動産会社の方々に販売活動をご協力いただいた結果、建物が建てられない区画を含めた全4区画の売却を終えることができました。
行政との協議が長期に及んだこと、造成工事が大規模になったこと等で事業完結までに約2年という期間を要しました。
担当者からの一言
今回の案件のポイントは、「市街化調整区域の農地の買取」でした。
大手不動産会社の方が複数の不動産買取会社にご相談され、「買えない」と言われてしまった市街化調整区域の農地。
農地を農地として購入するためと買えないのであって、農地を農地でなくしてしまえば、農地法の許可が要らない、この発想の転換において当社は今回の市街化調整区域の農地買取再販プロジェクトを成功することができました。
他社で買えない不動産を購入できるためのノウハウが当社にはあります。
そして、こういったノウハウは市街化調整区域の農地だけではなく、分野の広い不動産業界においては多岐にわたるのです。
当社には日々、「売れない不動産」と言われてしまったお客様より「直接、おたくで買い取ってくれないか?」というご相談も多数いただいております。
もちろん、購入させていただくこともありますし、売却のお手伝いをさせていただくこともあります。
今後も「お客様のために」を胸に買取り・売却のお手伝いを行っていきたいと思います。
関係者のみなさま、本当にありがとうございました。