戸建相続で取得した福島県白河市の別荘地の戸建を手放したい!(福島県白河市)
ご相談者: | M.I 様(税理士の先生からのご紹介) 東京都江東区 |
主人が亡くなり、相続で福島県白河市の別荘地内にある戸建を相続しました。
私は、その別荘にはもう何十年も行ったことがなく、場所もわかりません。
その別荘は所有しているだけでも毎年固定資産税、別荘地の管理費、水道代がかかってしまいます。
維持管理にお金がかかるこの別荘は子どもには残したくはありません。
売却のお手伝いをしていただけないでしょうか。
状況
・駅からは遠く、歩ける距離ではない
・毎年固定資産税の他に別荘地管理費、水道代がかかる
※毎年ランニングコストで約10万円
・長年空家となっており、著しく老朽化している
・東北の震災以降、敷地の一部を除染済み
・カースペースが狭い
・増築未登記部分がある
・境界標が一部不明
・建物内には生活できるくらいの家具が残置されている
解決策
1. お客様の打ち合わせ
税理士の先生より「私のお客様で田舎の不動産を手放したいという方がおり、御社にてご対応いただきたい」というお話をいただきました。
そのため、その先生よりお客様をご紹介いただき、すぐにお客様とその「田舎の不動産の売却」に向けての打ち合わせをしました。
2. 相場の把握
お客様とのお打ち合わせ前に不動産会社専用の不動産検索サイトやその他のサイト等により売却物件周辺において不動産取引きがされているか、もしされているのであれば、いくらくらいなのか、を調べました。
その結果、売却物件の周辺では全くと言っていいほど、不動産の取引き(売買)はされていませんでした。
そのため、お客様とのお打ち合わせの際にはその旨、正直にお客様にお伝えをさせていただきました。
それでもお客様は「この維持管理にお金がかかる不動産は子どもには残したくない。何とか手放したい。」とのご意向だったため、私のほうで売却のお手伝いをさせていただくことにしました。
3. 役所調査の実施
ご売却のご依頼をいただき、まずは市役所等で建築基準法、都市計画法、その他法令上の制限について、調査しました。
この調査では特に問題となることもなく、唯一注意する点としては、「地域森林計画区域内」の物件だったため、不動産を取得した買主様は所有権取得後一定期間内にその旨を届出る必要がありました。
4. 現場調査の実施
法令上の制限の調査をひと通り終え、現場調査を実施。
現場では、建物が老朽化していることが判明。
長年メンテナンスされていないことからも軒は無残にも剥がれ落ちてしまい、屋根には苔が生えていました。
室内には大量の家具や家電製品が残置されたままでした。
他に過去に増築された部分が未登記となってしまっていることも判明しました。
この点については、後日、地元の土地家屋調査士の先生と連携をとりながら増築部分の表示変更登記を実施しました。
土地家屋調査士の先生には未登記部分の表示変更登記の他に土地の境界標についてもチェックしていただきました。
ただ、前述の通り、建物は老朽化してはいるものの、別荘としての雰囲気があり、リフォームをすればまだまだ使えるものでした。
5. [補足]未登記部分の登記の実施
売却物件の未登記部分の表示変更登記については、前述の通り、地元の土地家屋調査士の先生にお願いをしました。
ただ、この時に問題が発生。
それは、増築未登記部分の場合、登記はされていなくても、固定資産税が課税されている、ということが一般的(この場合は登記が比較的容易にできます)ですが、売却物件については、未登記であるのは間違いなく、ただ、今まで固定資産税はずっと課税されていませんでした。
そのため、未登記部分を登記するという表示変更登記の際の所有権証明書が足りず、何もしないままでは増築未登記部分の登記ができませんでした。
もし、この増築未登記部分の登記ができないと将来、知らない人がいきなりきて、「増築未登記部分は私のだ」と主張されてしまう恐れがありました。(ないとは思いますが)
それをなくすためにも第三者への対抗要件としての「登記」は大切なのです。
今回は、土地家屋調査士の先生が市役所の固定資産係の方と協議を重ね、実際に固定資産係の方に現地確認をしていただき、数年過去に遡って課税をするということ(市役所より所有権証明書を発行していただくこと)で決着がつき、無事に未登記部分の表示変更登記を完了することができました。
6. 管理会社との打ち合わせ
現場調査を終えると別荘地内にある管理会社の窓口を訪問。
各種経費や一時金、毎月かかる費用や別荘地の注意点、名義変更方法等を教えていただきました。
私は、今まで複数の別荘地の物件の売買をしておりますが、別荘地の場合、管理形態も売却時の重要な要素の1つとなります。
7. 難航する売却活動
調査を終えて、横浜の事務所に戻り、売却活動の準備を開始しました。
販売価格は、売主様と協議の上、多額のリフォーム費用がかかることも考慮し、100万円にしました。
(土地100坪、建物15坪・築36年で)
販売開始時は多数のお問い合わせをいただき、地元の不動産会社の方にもご協力いただき、お客様に現地をご見学いただいておりました。
ただ、それも束の間、協力していただいていた地元の不動産会社の方より「上司の命令で業務内容と報酬が釣り合わないため、これ以上、この物件に関わるなと言われてしまいました」という話がありました。
※100万円の物件を仲介した場合の仲介手数料は、54,000円(消費税込)です。確かに不動産会社が受領する報酬と責任を天秤にかけた場合は不釣り合いかもしれません
とは言っても、私は何とかこの不動産を売却しなければなりません。
8. 購入希望者による入札の実施
地元不動産会社の方からの協力が得られなくなってもお客様からのお問い合わせは継続してありました。
ただ、実際に現地をご見学されたお客様はみなさん口をそろえて、「リフォームに多額の費用がかかる」の一点張りで購入に前向きな方は誰一人現れませんでした。
そこでお問い合わせいただいたお客様に1日限定で現地販売会を実施し、その時にご見学いただき、購入申込書を翌日中にいただいた方の中で最も条件が良い方にお譲りします、という入札形式をとることにしました。
9. 入札の実施と入札結果
1日限定の現地販売会での入札。
結果は9組にご来場いただくことができ、そのうち5組のお客様よりお申込書をいただくことができました。
みなさん、「9組も見に来るような物件、何とか手に入れたい」とお考えでした。
お客様からは「どうしたら買えるのか?」というお問い合わせを複数いただきましたが、私からは「金額含め、最も良い条件をご提示ください」とだけお伝えしました。
その結果、地元不動産会社にお願いして6ヶ月も売れなかった物件を私が直接ご対応させていただき、入札方式により100万円という価格交渉もない、好条件での買主様をお探しすることができたのです。
この時の売買条件としては、残置物はそのまま、売主様の瑕疵担保責任は免責(何か不具合があったとしても買主様の責任と負担で対処)というものでした。
10. 売買契約とお引渡し、森林法の届出
後日、私のほうで売買契約書を作成し、入札にて落札された買主様と売主様にてご契約をいただくことができました。
ご契約の際には買主様ご夫婦より売主様に「ご主人様が大切にされていた不動産、私たちで大切に使わせていただきます。ありがとうございました。」というお話をされていたことが印象的でした。
お引渡し後には、買主様に森林法の所有者変更届にご署名いただき、全ての手続きが完了しました。
担当者からの一言
今回の案件のポイントは、「子どもに残したくない不動産」でした。
ご主人様を亡くされ、相続された不動産、使わなくても何だかんだで毎年10万円近くかかってしまうその不動産。
昔はそれでも資産と言ったかもしれませんが、今ではこのように所有するだけで多額の費用がかかり、使わない不動産を負債、つまりは「負動産」と言います。
そして、誰しもがこの負動産を「子どもには迷惑がかかるので相続させてたくない」と考えます。
もちろん、お子様たちも「何も使わないのにお金がかかる負動産は、相続したくない」と考えます。
ただ、相続において、預貯金などの資産だけを相続するということは許されていません。資産を相続するときには相続人の誰かがこの負動産を相続しなければならないのです。
今回のお客様については、私にご依頼いただくことにより、無事に手放すこと、というより有償にて売却することができました。
現代では少子高齢化が進み、ところどころに空家や空地が見受けられます。
空家が増えるということは住宅需要が減少しているという証拠。
今後、ますます地方の不動産は売りづらくなっていきます。
みなさんは、田舎の使っていない不動産、いつ手放すのがいいとお考えですか?
答えは、「今」です。
将来、子どもの代に負動産を残さない、これを叶えるには今、動くしかありません。
関係者のみなさま、本当にありがとうございました。