ご相談事例

その他老朽化した借家人がいるまま買い取ってほしい!(川崎市麻生区)

ご相談者:大手不動産会社 様
川崎市麻生区

 先日、お客様より川崎市麻生区にあるアパートの売却相談をいただきました。
そのアパートは駅から近い点は良いのですが、築35年が経過しており、かなり老朽化が進んでいました。
現在は、全6戸のうち1戸だけに借家人が住んでいる状態です。
売主様としては、煩わしくないように入居者への立退き交渉はせずに売却したいとお考えです。
御社にてこの老朽化したアパートを入居者がいるままで買い取っていただけないでしょうか?

状況

老朽化した借家人がいるまま買い取ってほしい!(川崎市麻生区) 状況
【所在】川崎市麻生区百合丘1丁目
・駅から近い閑静な住宅地に立地
・築35年で所々老朽化している
・全6戸内1戸のみ賃貸中

解決策

1. 担当者からの買取依頼

 大手不動産会社の担当者より「新規で売却依頼をいただいた古アパートを買い取ってほしい」旨のご連絡をいただきました。
 その後、すぐに詳細資料をいただき、具体的なお話をお聞きしました。
するとそのアパートは全6戸のうち1戸のみ賃貸中(入居者がいる状態)とのことでした。
その時、担当者からは「他の5戸は所有者が立退きをせずに自然に退去され、入居中の1戸についても所有者からの立退き交渉は一切していない」旨ヒアリングしました。

2. 建物の内見から事業計画の検討

 物件資料をいただいた後、担当者同席のもと、現地建物を見学。
 現地は、小田急線「百合丘」駅からも近く、静かな住宅地で利便性・住環境ともにとても良いところでした。
建物自体は築30年が経過し、所々老朽化が進んでいました。
空き部屋の5戸の室内は、過去に補修はされているところはあるものの、全体的に昔ながらの間取り・設備で表層リフォームをした程度では入居者が決まりそうもありませんでした。
 そして、リフォーム会社の方からいただいたアパート一棟の修繕費用の見積もりは1,000万円でした。
 そのことを踏まえ、購入後リフォームして賃貸にするか、1戸の入居者の方のお話をお聞きして、もしご退去される時期が近いのであればそれまで待ち、その後建物を新築し、分譲住宅として販売することも考えました。
いずれにしても、どちらの方法でも対応ができるように詳細まで事業計画を検討し、最終的に売主様の希望額にて購入申込書を提出しました。

3. 売買契約(仕入れ契約)の締結と引渡し

 担当者に購入申込書を提出後、後日、当社と契約に向けて進めたいという旨のお話をいただきました。
 契約締結前に何重にもチェックが入った大手不動産会社作成の契約書・重要事項説明書の確認。
内容的に問題もなく、後日、大手不動産会社の営業所にて売主様にも同席いただき、売買契約を締結しました。
 ご契約時には、売主様に入居者の方との関係性を確認しましたが、売主様からは「特に揉めてもいませんし、立ち退き交渉はしていません」というものでした。
その後、引渡しに向けての準備。
契約締結から2ヶ月後に売主様に残代金をお支払いし、所有権と鍵を受領しました。

4. 入居者との協議・リフォームの検討

 当社が物件取得後、早々に入居者の方にご連絡しました。
※入居者の方がご高齢の方だったため、入居者のお子様にご連絡
後日、現地で入居者の方とその息子さんとお会いしました。
ただ、その時に入居者の方から聞いた内容は驚くべきものでした。
それは「つい先日まで前の所有者の方と管理会社の方より執拗に立退きを迫られた。テレビが見づらいと言った時には、立退きをしないのであればアンテナを外してテレビを見られないようにする、とまで言われ、正直、恐怖を感じた。弁護士にも相談した。何かあれば弁護士を通して欲しい。それに母はもう年配なので引越すこと自体考えていません。」というものでした。
 そのこと自体、私も初耳だったため、入居者の方には「ご事情はわかりました。私が所有している間は退去については一切お願いしません」とお伝えしました。
当社としては、毎月の融資の支払いが発生するため、そのまま空家にしておくわけにもいかず、リフォーム工事をすることも具体的に検討しました。

5. 試しに売却活動をした結果

 多額のリフォーム工事を行う前に周辺の賃貸需要を再度リサーチしました。
すると百合丘駅周辺には賃貸住宅が飽和状態となっており、数多くの空家(入居者募集中のお部屋)がありました。
酷いところでは、駅徒歩8分で16㎡の賃貸住宅の家賃が13,000円なんてものもありました。
そのため、リフォーム工事をした後の空室リスクを考慮し、試しに水面下で入居者が1組いるままでの物件(オーナーチェンジ物件)、かつ、入居者の方がこのまま住み続けたいという意向があるという状態(通知して)で売却活動を行いました。
その結果、「水面下(未公開」での売却活動が功を奏したのか、なんとチャレンジ価格で売却活動をし始めたばかりにもかかわらず、横浜市内にある不動産会社から入居者がいるままの状態で購入したい旨の買付証明書に成功。

6. 売却の売買契約と引渡し

 リフォームするか、売却するかの中で悩みつつ進めた売却でしたが、当初より売主様からお聞きした内容と現実との相違など文(あや)がついてしまったため、買付証明書をいただいた不動産会社に売却することに決定。
個人的な意見ですが、不動産売買においてどこかで文がついてしまったた物件は、最後まで何度もトラブルが起きる傾向にあります。

 売却を決定した後、間に入っていただいた仲介業者さんにて売買契約書・重要事項説明書を作成し、その内容を確認し、後日、買主様の会社にて売買契約を締結しました。

 その後、買主様、当社と引渡しに向けて準備。
引渡し準備が整ったところで残代金を受領し、所有権と鍵をお引渡ししました。
この時、買主様への所有権の移転に伴い、入居者の方に所有者と家賃振込先口座が変更となる旨の通知をしました。
 書類での通知後、所有者が変更となる旨、お電話でもご連絡させていただきました。
そして、無事に売却手続きが完了しました。

担当者からの一言

 今回の案件のポイントは、「信頼関係」でした。

 当社が取得し、入居者の方からお聞きするまで売主様は入居者の立退き交渉はしていないということでした。
ところが、入居者の方から聞こえたのは売主様、管理会社からの執拗な立退きのための嫌がらせがあったというものでした。
 入居者の方は住むために家賃を貸主に支払いします。
それなのに貸主が自分の都合だけで立退き交渉をしてしまうと入居者の方との信頼関係は一瞬でなくなってしまいます。
 もし、立退きして土地として高い金額で売却したいと考えるのであれば、貸主として入居者の方に誠意をみせなければなりません。
過去に家主、入居者の関係が良好でスムーズに立退き交渉がまとまったことが何度もあります。

 入居者の方は、期日までに家賃をしっかり支払う、建物を大切に使用すること、家主としては入居者の権利はしっかりと守ること、これがお互いの信頼関係を築いていくうえで重要な要素となります。

 なお、今回のケースでは売主様は入居者との立退きについて、現実のことを告げず、売買しました。
程度にもよりますが、もし、当社でない不動産会社が立退き前提で購入していた場合、売主様は不実の事実を告げたことによる何かしらのペナルティを受けていたかもしれません。
そう考えても売主様は、当社に売却されて正解だったと思います。
※当社としては売主様には一切何らの請求もしていません
やはり、売主様としては「誰(どこの不動産会社)」に売却するかもしっかり検討する必要があるのですね。

関係者のみなさま、本当にありがとうございました!