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土地他界した主人が昔購入した市街化調整区域にある土地を売却したい!(広島県福山市)

ご相談者:H.S 様(大手不動産会社からのご紹介)
東京都江戸川区

 8年前に他界した主人が40年以上前に当時の勤務先の方の紹介で広島県福山市の土地を購入していました。
私たち夫婦は長年都内に住んでおり、私自身その土地を見たことがありません。
ただ、その土地は、持っているだけで年間23,100円の固定資産税がかかってしまうため、子どもたちにはには残したくないと思います。
地元不動産会社にも相談しましたが、「市街化調整区域で売れない」と言われてしまいました。
私の不安を解消するためにもご協力お願いします!

状況

他界した主人が昔購入した市街化調整区域にある土地を売却したい!(広島県福山市) 状況
【所在】広島県福山市大字箱田
・駅から徒歩圏の平坦地
・土地面積は299㎡の路地状敷地
 ※道路との接道幅2m
・前面道路は幅員 約3.5mの公道
・市街化調整区域のため、原則建築不可
・大部分の境界標が不明
・周辺は住宅地と農地が混在
 ※隣接地は農地のみ
・誰かが現地を無断で使用
 ※残置物有り

解決策

1. お客様との打ち合わせ

 今回のお客様は、私以前勤務していた大手不動産会社の先輩からのご紹介のお客様でした。
お客様のお嬢様がその大手不動産会社にお勤めされており、そのこともあり私の元にご相談いただけたのです。
 まずお客様とお会いしてお聞きしたことは、売却希望物件を本当に処分しても良いのかというところからご質問させていただきました。
ご年配のお客様は、「元々亡くなった主人が40年以上前に購入した土地です。毎年所有しているだけで固定資産税がかかってしまいます。そんな土地を子どもには残せない。だから早い段階で処分し、気持ち的な不安を解消したいんです。金額には拘りません。タダでもいいから何とかしたいと思います。」ということでした。
 ちなみに売主様、お嬢様の方で当社にご依頼いただく前に複数の不動産会社に売却の相談をされたそうですが、全ての不動産会社から「市街化調整区域で建物が建てられないから売れない」と言われてしまったそうです。
 私からお客様には、売却にかかる流れ、現地までの交通費など諸経費、周辺の不動産の取引状況などをご説明しました。
なお、売却物件が市街化調整区域ということもあり、周辺の売出し物件や成約事例を調べてもほとんど登録がありませんでした。
 お客様から正式にご売却のご依頼をいただき、媒介契約の締結。
現地周辺にお住まいで売主様がご存知の方をヒアリングしました。

2. 区長さんへの挨拶

 ご売却のご依頼をいただいてから、調査のスケジュールを組みました。
横浜の不動産会社の当社が、広島県の売却物件を調査するためには、数日予定を空ける必要があったからです。
 調査日も決まり、飛行機でいざ広島県へ。
現地に到着後は、レンタカーを借り、まず向かったのは、地元の区長さんのお宅。
前もって「売却物件を処分するために伺う」という要件を伝え、お約束してから伺ったため、区長さんの方で地元不動産会社の方をお呼びいただいていました。
ただ、その不動産会社の方からの売却物件に関する見解は厳しいもので「建物が建てられない道路間口2mの土地はこの辺りでは買う人がいない」というものでした。

3. 役所での物件調査

 区長さんのご自宅を後にし、向かったのは市役所などでした。
目的は、都市計画法・建築基準法・法令上の制限の調査でした。
 売却物件を調査した結果、やはり市街化調整区域にある土地で今まで何十年も建物が建てられていなかったことで新規に建物を建築できない土地(建築不可物件)でした。
その他、大きな問題となるようなことはありませんでした。

4. 現地調査の実施

 法令上の制限の調査を終え、売却物件の現地に向かいました。
現地は住宅が点在しつつ、畑が多いという地域で、隣接地については全て農地でした。
そしてその売却物件を誰かが家庭菜園として使っていました…。(農具なども残置されていました)
そのことについて売主様にヒアリングしても、「全く亡くなった主人からは聞いていない」との回答。
 その他、土地の長さを計測し、境界表を確認しました。
 前面道路も4m未満、土地形状が路地状敷地(旗竿地)で道路との接道幅が2mということもあり、軽自動車以外の進入はできない土地でした。
境界標については、大部分が不明でした。
この時点で売却のための難易度が高い物件だと改めて実感しました。

5. 近隣住民への聞き込み(1)

 現地調査後、そのまま近隣住民を訪問。
 その理由は、無断で家庭菜園として使っている方の連絡先を知るため、そして購入していただける方がいないか把握するためでした。
近隣住民の方であれば、車が入らない土地であったとしても家庭菜園や資材置場として活用いただけると考えたからです。
 まずは隣の農地で耕作されていた方にお声がけし、ヒアリング。
その方からは、「農地はもういらない。子どもたちは会社員として生活しているから農地をもらっても子どもたちに売れない土地を残すだけになってしまうから」というものでした。
他にも複数の近隣住民の方を訪問。
中には「よそ者がこんなところで何してる」とか手厳しい対応の方もいらっしゃいました。
ところが、その中で2組の方から有力情報を入手することができました。
 1組は道路向かいの方で土地を家庭菜園として利用されている方を知っているかもしれないということでした。
そのため、早速、ご連絡をとっていただきました。
その方には、「もし、家庭菜園として継続して使っていただけるのであれば、土地をお譲りします」とお伝えしましたが、やはり「この土地をもらっても将来、子どもが困るだけなのでいらない」というものでした。
そのため、私の方で残置物の撤去・土地の返却のお願いをしました。
なお、売却物件を使用されていた方は、他界されたご主人様より何年も前に使用を許可されていた方でした。(無断使用ではありませんでした)

6. 近隣住民への聞き込み(2)

 2組目の近隣住民の方は道路向かいの私道の奥にご自宅のある方でした。
ゆくゆくお話をお聞きすると「将来的に家庭菜園などをやりたいが、自宅の土地では狭すぎる」ということを遠回しにお話しされていました。
 そのため、私の方で「今だったらご自宅近くの土地を購入できます。ぜひ、前向きに検討して欲しい」旨お伝えしたのです。
 それから諸費用の計算、金額の調整など再三再四に渉る協議を行い、最終的にこの近隣住民の方にご購入いただくことでまとまりました。
この時、金額について私が近隣住民の方にお話したことは、「タダだと贈与税がかかってしまう。有償の方がいいと思います。金額については、決めていただいて結構です」と購入者側で決めていただくようにしたのです。

7. 売買契約の締結と引渡し

 そして、横浜の会社に戻りました。
売主様には適宜状況をご報告しており、その際にご契約に向けての必要書類のご案内もしていました。
 今回、ご契約のために売主様が現地に行くことができなかったため、予め買主様が指定した
司法書士の先生により売主様の本人確認・売却意思確認をしていただきました。
それが終わると私が売主様のご自宅に伺い、売買契約書等の契約書類のご説明をし、ご署名・押印いただきました。
後日、その書類を持ち、再度、広島県へ。
司法書士の先生の事務所に買主様にもお見えいただき、売買契約の締結と契約書類・所有権移転関係の書類への署名・押印をしていただきました。
司法書士の先生の事務所での手続きを終えると買主様と一緒に最寄りの金融機関に行き、買主様に売買代金を売主様指定口座にお振込みいただき、全ての手続きが完了しました。
 そして、複数の不動産会社から「売れない」といわれたこの売却物件は、最終的に70万円超となる金額で売却することに成功したのです。

担当者からの一言

 今回の案件のポイントは、「近隣住民アプローチ」でした。
 
 普段から遠方の売りづらい案件に携わって、それらを売却し続けている私。
この売却の可能性を高めているのが、近隣住民へのアプローチです。
知らない土地で知らない方とお話をするのは、いつもちょっとドキドキします。
ただ、何度も行くことができない土地であれば、尚更、近隣住民へのアプローチを忘れてはいけません。
 その時のポイントは、言葉尻などで「買いたいオーラ」を出しているかどうかを見極めること。
それは言葉にするのは簡単ではありませんが、意識して続けていけば間違いなく結果がついてくることです。
今回も難あり物件が無事に売却でき、売主様の不安を解消し、買主様の希望も叶えることができました。
そして、相場がないところに相場をつくることに成功!
 
関係者のみなさま、本当にありがとうございました!