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土地郊外の長年放置してしまった空き店舗を処分したい!(静岡県掛川市)

ご相談者:横浜市内の不動産会社 様
横浜市瀬谷区

 静岡県に先代の社長の時代に買った空き店舗があります。
 その空き店舗はかなり老朽化しており、現状のまま使用することができません。
地元不動産会社に売却のご相談をしましたが、売れない場所らしく断られてしまいました。
難しい物件だとは思いますが、御社で売却のお手伝いをしていただけないでしょうか?
よろしくお願いします!

状況

郊外の長年放置してしまった空き店舗を処分したい!(静岡県掛川市) 状況
【所在】静岡県掛川市長谷
・駅から徒歩圏の平坦地に立地
・土地面積498㎡、建物面積44㎡(築40年)
・境界標が大部分不明
・前面道路はバス通りとなっている
・建物は老朽化しており、外壁が一部
 剥がれ落ちている
 ※現状空家で使用不可
・権利関係が複雑
 ※建物が南側の農地の上に建築されて
  しまっている
・地元不動産会社も売りづらいと懸念する地域
・無断で第三者の車が駐車されている

解決策

1. 担当者との打ち合わせ

 今回の相談者は、当社と何度もお取引きいただいている横浜市内の不動産会社様でした。
 現在の代表の方は、先代の代表であるお父様が他界され、会社を相続されました。
もともと先代の代表の方が競売物件で地方の難あり物件を複数購入しており、その1つに今回の売却物件もありました。
 ご相談いただいてから担当者を訪問し、面談を実施。
担当者の方が自ら売却に向けて動かれたそうですが横浜から売却のある静岡県掛川市まで遠いこと、地元不動産会社にご相談されても「売れない場所」と言われてしまい良い返事がいただけなかったことでお悩みになられていました。
そんな中、当社に売却物件の処分について白羽の矢が立ちました。
担当者の方との打ち合わせでは、かなり建物が老朽化していることをお聞きし、物件に関する書類一式をお預かりしました。

2. 現地調査で気づいたこと

 担当の方との打ち合わせ後、現地調査の準備をしました。
当社のある横浜から車で約3時間と遠い現地。
現地に到着するとそこには外壁が剥がれ落ちている古家がありました…。
それに加えこの古家、どうやら南側隣地(農地)に越境していまっている状況でした。
また、隣地との境界標は見当たらず、敷地内に「誰か」の車が駐車されていました。

3. 行政での物件調査

 現地調査を終え、市役所などで法令上の制限の調査を行いました。
売却物件は、未線引き区域内の第1種住居地域でした。
法令上の制限の調査については特に懸案事項はありませんでした。

4. 関係者との協議

 調査を終え、売主様担当者にご報告。
その際に古家が隣地農地に越境していること、第三者の車が無断で駐車されていることをお伝えました。
 古家が隣地農地に越境していることについては、売主様に代わり私が農地所有者と協議すること、駐車車両については売主様にてご対応いただくことで話がまとまりました。
 まず、私が隣地農地の所有者(Y様)を訪問し、「売却物件の建物がY様所有の農地に越境している。その越境について建物の建替えまでの間、現状のままで了承していただきたい」旨、お願いしました。
するとY様からは「農地は102㎡あり、使っていないのに毎年固定資産税が13,000円かかり、その他にも草刈り代がかかっている。子どもにもこの農地を残したくない。もし、手離せるのであれば手放したい。買ってもらえないか?」旨のお話をいたただきました。
ただ、未線引き区域の農地は売買するためには、「農地法の許可」が必要となります。
そのため、一度お話を持ち帰り、売主様と協議することにしました。
その結果、「Y様もこのままだと農地を手放せずに困ってしまう、それであれば私たちでその農地をお引受けしましょう」となったのです。
 そして、Y様がご所有されている農地については、今回の売主様にて購入すること方向で手続きを進めていきました。
 一方、無断駐車していた車両については、売主様が何度か駐車車両の窓ガラスに警告文を張り付けた結果、解消されました。

5. 農地購入に向けての手続きと測量開始

 今回、Y様の農地が未線引き区域の農地のため、売却物件の売主様が購入するためには農地法の許可が必要となります。
まずは農地の売買代金の協議を行い、金額の折り合いがついたところで地元行政書士の先生、土地家屋調査士の先生、司法書士の先生と一緒に再度Y様を訪問し、売買契約の手続きと同時に農地法許可申請、測量の立会証明書、所有権移転登記のための本人確認作業(Y様がご高齢だったため、予め本人確認作業を行うことにしました)を行いました。
 すぐに行政書士の先生による農地法許可申請がなされ、1ヶ月後に無事にそれが許可され、農地法の許可証を取得することができました。
それから司法書士の先生と再度、Y様を訪問し、売買代金のお支払い、所有権移転登記手続きを行い、Y様取得の農地部分の取得ができました。
これにより越境に関する合意書の締結は不要となりました。
 この間、土地家屋調査士の先生に土地の測量・境界確定作業を開始していただいたのです。

6. 売却活動の実施

 農地の取得ができたところで売却物件と取得した農地部分を一括で古家付き土地として450万円から売却活動を開始しました。

 地域的なこともあってかなかなか増えないお客様、他社さんからのお問い合わせ。
それでも挫けることなく、地元不動産会社、ハウスメーカー、工務店などに情報を発信。
各種不動産検索サイトへの登録はもちろん、SNSでも積極的に情報を発信していきました。
 最終的には多方面に情報を発信したことが功を奏し、売却活動を開始してから5ヶ月で販売価格そのままの価格でのお申込書取得に成功。
購入希望者の方は、市内の賃貸住宅にお住まいのお客様で地元不動産会社兼工務店さんのご紹介の方でした。
ただ、この時、土地の測量中の状態でした。

7. 売買契約と融資審査、難航する測量

 買主様が決まったところで、契約書類の作成に取り掛かりました。
 後日、古家がある状態での引渡し、境界標はお引渡しまでに設置する旨の条件で売買契約を締結していただきました。
ご契約いただいた後は、買主様に融資の本審査申込みをしていただき、申込みから間もなく、その融資が承認されました。

 ただ、ここで問題が勃発。
 今回の売却物件の測量作業中に隣地所有者からの立会い協力が得られないことが判明しました。
その理由は隣地土地所有者は親戚関係複数名で共有をされていたのですが、そのうちの数名が「自分たちには今回の売却物件の境界確定は関係ない。だから協力もしたくない。」と言われたのです。
これについては、土地家屋調査士の先生経由で売主様と一緒に再三再四境界立会いのお願いをしましたが、最終的に隣地所有者からの立会い協力は得られませんでした…。
そのため、売買契約について、「一部の境界標の明示ができないこと」が確定し、その旨、買主様にもお話しさせていたただきました。
 すると買主様からは「私たち家族はこの土地を非常に気に入っている。だから、境界標が設置できなくても、将来トラブルとならないようにしてもらえればいい」旨のお話がいただけました。
そのため、売主様とも協議をし、境界標が一部設置ができないことを考慮し、売買代金を減額させていただくことにしました。
 将来、揉めないようにするためにも土地家屋調査士の先生と法務局、市役所などで官民、民民の境界に関する協議、地積更正登記(実測面積と登記簿面積を合わせる作業)を行い、土地家屋調査士の先生に今までの経緯をまとめ文書化していただきました。

8. 残代金・お引渡し

 残念ながら測量については、想定外のことで不調に終わりましたが、売買代金を減額したことで契約自体は続行となりました。
 そのため、境界標の明示、売買代金減額に関する覚書を作成し、売主様、買主様にご署名いただき、お引渡しの調整に入りました。
後日、買主様のご利用される金融機関に集合し、残代金の授受、鍵・所有権の引渡し手続きを無事終えることができたのです。

担当者からの一言

 今回の案件のポイントは「越境解消の方法」でした。

 今回の売却物件は、古家が隣地に越境していました。
越境している建物の場合、隣地所有者より「早く是正してほしい」と言われることがあります。
この是正作業には多額の費用がかかってしまいます。
そうならないためにも「建替えまでは現状の越境したままの状態を容認する」旨の承諾書いただくこともあります。(承諾料をお支払いすることも有り)
 ただ今回の場合、越境されている側の農地所有者Y様も農地を手放したいということだったため、その農地を購入することで越境を解消することができました。
つまり、越境の解消は越境物を撤去するという方法以外にも越境されている土地を購入したり、借地したり、建替えまで現状のまま認めてもらうという方法もあるんですね。
なお、越境トラブルに関しては、密集エリアでは頻繁にあることなので注意が必要です。

 今回も売れない地域の物件を売却することができ、私としてもひと安心でした。

関係者のみなさま、本当にありがとうございました!