戸建相続で取得した伊豆の別荘をタダでもいいから手放したい!(静岡県賀茂郡東伊豆町)
ご相談者: | J.Y 様(インターネットからのお問い合わせ) 東京都西東京市 |
2年前に母が他界し、伊豆にある別荘を相続しました。
その別荘は、母の代から10数年現地に行っていないため、建物がどうなっているかもわかりません。
それに母から相続した時に資料など一切引き継いでいないので鍵もありません。
その別荘は別荘地内にあるため、毎年管理費と水道代、固定資産税がかかっています。
いろんな不動産会社に売却の相談をしましたが、地域的にも物件的にも難しいらしく相談した不動産会社から「売れない」、「うちでは扱えない」と全て断られてしまいました。
そんな時にインターネットを見ていたら、昨年同じ別荘地でリライトさんが売却したとでているのを見て、藁にもすがる思いでご連絡させていただきました。
本当にタダでもいいんです、何とか処分のお手伝いをしてください。
お願いします!
状況
※南熱川別荘地内の別荘
・土地271㎡・建物86㎡(3DKタイプの間取り)
・鍵がない
・駅からバス便エリアに立地
・物件周辺、駅までのアプローチが急坂と
なっている
・使っていなくても毎年固定資産税、別荘地の管理費、
水道料金などのランニングコストがかかる
・売買の際に諸費用が約200万円かかる
・温泉利用可
・海が遠望できる
・駐車場がない(築造には多額の費用がかかる)
・土地の全部が崖地
・建物が老朽化している(築43年)
※雨漏り・建付け不良有り
・残置物が多数ある
・境界標が一部不明
解決策
1. お客様との打ち合わせ
お客様よりメールで「相続で取得した東伊豆町の別荘を売却したい」旨のご相談をいただきました。
後日、お客様にご来店いただき詳細をお聞きしました。
その時にお聞きした内容は、相続で取得した東伊豆町の別荘は持っているだけで結構なランニングコストがかかること、別荘を残すと子どもの負担となってしまうため、タダでもいいからどうしても処分したいということ、複数の不動産会社に処分したい旨相談したがどこも対応してくれなかったこと、鍵を持っていないことなどでした。
そして、最後に「テレビで田中さんが昨年同じ別荘地内の別荘を売却していること、インターネットで無事にその別荘の売却ができたことを見ました。他に頼むところがありません。藁にもすがる思いで来ました。私が所有している別荘を本当になんとかしてください。お願いします!」とお話をいただいたのです。
流石にここまで言われると当社でなんとかするしかありません。
そこで今回の処分案件についてご協力させていただくことにしました。
ただ、昨年同じ別荘地内で売却できた別荘は、何ヶ月もかけてやっと1円で売却できました。
その売却できた別荘はなんとかカースペース1台確保できるというものでしたが、今回の別荘はカースペースもつくれそうにもありませんでした…。
2. 売主様にまずしていただいたこと
当社にて処分業務を受付け、すぐに売主様に動いていただきました。
それは、売主様の手元に鍵がなかったため、管理事務所に鍵の預託がされていないか確認していただいたのです。
すると管理事務所の方で売主様のお母様より鍵を預かっていたため、そのスペアキーを複製していただいたのです。
その際に売主様は、10数年ぶりに建物の内部をご覧になられ、衝撃を受けたそうです。
それは建物がとても痛んでいたこと、現地には生活できるくらいの残置物があったことについてでした。
そこで売主様はいろいろと考えた末に売却活動を開始する前にお金をかけて、売却物件のハウスクリーニングをされたのです。
3. 市役所などでの物件調査
お客様よりスペアキーをお預かりした後、調査のため東伊豆町に行きました。
市役所や下田市にある土木事務所などで調査を実施。
すると売却物件が災害危険区域、土砂災害特別警戒区域に指定されていること、東伊豆町の住民以外が購入すると町県民税がかかることなどが判明しました。
今回の物件調査については、前回同一別荘地内の物件調査をした経験があるため、勝手がよく効率的に行うことができました。
4. 現地調査の実施
法令上の制限などを終えると売却物件に現地に向かいました。
売却物件は心臓破りの坂を上り、そして坂を下ったところにありました。
駅からは距離があり、徒歩では遠すぎ、バスも走っていない別荘地でした。
現地に着くとそこにはカースペースがなく、全体が急傾斜地となっており、建物は道路から階段を20段以上上ったところにありました。
※道路との売却物件の接続部分が急傾斜のため、カースペースを築造するためには多額の費用がかかります
外壁には苔が生えており、風で煽られたのか軒先は落ち、戸袋にはキツツキに開けられたであろう穴がたくさんありました。
恐るおそる玄関を開けてみると…意外と趣きがあり、雰囲気の良い玄関。
ただ、昭和の時代をイメージさせる古い家具、その中にはブラウン管テレビなどもあり、残置物の量としてはかなりのものでした。
所々雨漏りしており、建付けも悪く、閉まらない扉や開かない窓がありました。
それでも旅館のような温泉がでる浴室からは海が遠望ができ、緑に囲まれていることからも別荘としては、もってこいの物件でした。
室内では間取図を作成し、売却活動用の写真を撮影し、外部では周囲の長さの計測・境界標の確認を行いました。
境界標については、道路側はあるものの、反対側の境界表は見当たりませんでした。
5. 管理事務所での打ち合わせ
現地調査を終えて次に向かった先は、管理事務所でした。
管理事務所に伺った理由は、売却物件の年間の管理費、水道料金、温泉料金の確認と昨年取引きした同一別荘地内の別荘契約の時から規約や金額的に変更がなかったかどうかの確認のためでした。
なお、今回の売却物件については、例え売買代金が1円だったとしても水道権利金・温泉権利金・設備使用料・名義変更手数料・登記費用・不動産取得税などの合計が200万円超かかるうえに、それ以外に残置物撤去費用やリフォーム費用、合併浄化槽の設置費用などがかかってしまう物件でした。
最後に売却活動に際に現地対応についてお力添えいただくよう管理事務所の方にお願いをしました。
6. 難航する売却活動(1) 初めての予約制内覧会の開催
現地調査を終え、売主様にそのご報告。
そして、売主様と協議をし、当初売却価格を決定しました。
販売価格は物件価格以外に200万円以上かかることを考慮し、1円となりました。
「東伊豆町にある海が遠望できる温泉付き1円別荘」とネーミングをし、売却活動を開始しました。
不動産会社専用サイト含む各種不動産検索サイトに情報を掲載し、SNSを駆使し広範囲にターゲットを想定し、情報を発信していきました。
その結果、お問い合わせは多数いただけたものの、イニシャルコストとランニングコストがかかることがネックとなり、一向に具体的なお話にはなりませんでした…。
その中でも少しずつ建物を見学したいというお客様をお探しすることができたため、予約制内覧会を企画。
予約制内覧会を企画した理由は、横浜にある当社がお客様のご案内のために東伊豆町の現地に行くには多額の交通費がかかってしまいます。
この交通費については、当初より売主様にご負担いただくことになっていたため、1件のお客様毎に現地に行くというのは売主様の負担が大きくなってしまいます。
売主様にご負担いただく交通費を抑えることなど効率化した結果が予約制内覧会でした。
そして、第1回目の予約制内覧会を開催。
結果は、静岡県、神奈川県はもちろん、東京都、埼玉県、千葉県、茨城県などから11組ものお客様にご来場いただくことができました。
ところがご来場いただいたお客様からは誰からも購入申込書をいただくことができませんでした。
理由は、やはり物件購入時のイニシャルコストとその後のランニングコストでした。
それ以降も諦めることなく、売却活動を継続し、情報を発信し続けました。
その間、他の不動産会社からのお問い合わせは1件もありませんでした。
7. 難航する売却活動(2) メディアの活用
引き続き売却物件の情報を発信し続けていました。
その都度、建物を見たいというお問い合わせをいただき、その後も定期的に予約制内覧会を開催しました。
当初は営業の相山(あいやま)と私の2人体制で現地対応をしていましたが、途中からは相山一人に任せ、内覧会を続けていきました。
雨のちらつく冬場の寒い時期に行った内覧会では誰一人として来場者もなく寒さに震えただけで終えたこともありました。
ただ、「このままでは終われない!」この想いだけが当社を突き動かしていったのです。
そこで考えたのは、「メディアの活用」でした。
複数のテレビ局の方と繋がりがある私は、直接、「東伊豆町にある海が遠望できる温泉付き1円別荘」の売り込みを行いました。
その結果、数局のテレビ局の方や雑誌の編集者の方よりお問い合わせをいただき、テレビで放送していただいたり、雑誌に掲載していただけたのです。
これにより今まで以上に情報が多くの方の目に留まるようになりました。
一時は沖縄県にお住まいのお客様から「現地を見学に行きたい」というお問い合わせまでいただくことできました。
さらに海外のドイツ放送まで取材に来ていただき、ドイツでも放送していただけたのです。
8. 購入希望者は意外なとこに
何回も予約制内覧会を行ったにもかかわらず、買主様をお探しすることができないことに半ば心が折れそうになりました。
そんな時に売主様から言われたひと言、それは「リライトさんはよくやってくれました。ここまでやっていただいてダメなら、自分でも納得できます。売却はやめましょう」というものでした。
このままでは終われない、絶対に売却すると考えていた私は、「必ず売ります。もう少しだけ私に時間をください」と売主様にお伝えしました。
それに併せて「ここまで売却活動をしてきている中でネックとなっているのはイニシャルコストとランニングコストです。そのイニシャルコストの一部でもご負担いただくことはできないでしょうか?」と売主様にお聞きしました。
すると売主様からは「金額にもよりますが、前向きに検討したい」旨の回答をいただくことができました。
そして、売主様の処分したいという願いを叶えるために、自分の責務を全うするために営業の相山と二人三脚で売却活動を続けていったのです。
それから数日後、インターネットを見たという山梨県にお住まいのお客様よりお問い合わせをいただきました。
お話を聞く限り、売却物件がそのお客様の条件にかなり近いことがわかりました。
そのため、予約制内覧会ではなく、特別にそのお客様のためだけに現地までご案内に行きました。
その結果、売却物件を大変気に入っていただけたお客様。
ご資金計画、一連の流れをご説明し、ご検討いただきました。
するとお客様からの回答は、「購入に向けて前向きに検討はいているものの、イニシャルコストの負担が厳しい」というものでした。
すぐさま、売主様と打ち合わせをし、その旨協議をしました。
売主様からは「処分するためなら諸費用のうち50万円までは負担してもいい」というものでした。
そして、その旨、お客様にお伝えしたところ、やっとのことで「購入に向けて進めたい」というお話をいただくことができました。
それは売却活動から11ヶ月が経過した時点でした。
売買契約の条件は、境界標非明示・契約不適合責任免責(瑕疵担保責任免責)・現況有姿(残置物そのまま)・売主様が諸費用の一部50万円を買主様に支払うというものでした。
9. 売買契約の締結とお引渡し
買主様が決まり、売買契約に向けて準備に取り掛かりました。
契約書類を作成し、売主様、買主様に予めご確認していただきました。
そして、後日、当社に集合し、売買契約の締結、鍵のお引渡し、所有権の移転手続きを行いました。
この時、売主様は売買代金である1円を受け取った後、買主様に対し、諸費用の一部として50万円をお支払いされたのです。
契約手続きが全て終わると別荘地の管理事務所に連絡をし、所有権が変わったことをお伝えし、売却活動の際のご協力のお礼をしました。
担当者からの一言
今回の案件のポイントは「マイナス売買」でした。
今回の売却案件は、1円で売買しても200万円の諸費用がかかってしまい、多額のランニングコストがかかる強敵でした。
一生懸命売却活動を行っていましたが、買主様をお探しできなかった期間は正直心が折れそうでした。
ただ、「とにかくいろんなことで発信する」ということを継続した結果、なんとか買主様をお探しすることができたのです。
物件の特徴からも最終的には1円で売買し、売主様が買主様に諸費用の一部として50万円をお支払いされるという「マイナス売買」でした。
これにより売主様は無事に別荘を処分することにより、買主様は憧れていた東伊豆町での生活を手に入れることができました。
そして当社は…無報酬のボランティアでしたが、売主様、買主様のご契約時の笑顔を見たら、今までの疲れが吹っ飛びました。
そして、こんなに売りづらい物件を売却できたという自信がつき、これからも引き続き売れなくて困っているお客様の不動産を売却していかなければと改めて実感したのです。
売却活動にご協力いただいた管理事務所のみなさま、、メディア関係のみなさま、取材にご協力いただきおいしいカレーまでご馳走してくれたユーザーのM様、そして関係者のみなさま、本当にありがとうございました!
※暑い日も、寒い日も一緒に売却活動を手伝ってくれた営業の相山さん、お疲れ様でした