戸建遠隔地にある10年間空家の戸建を売却したい!(愛知県犬山市)
ご相談者: | N.K 様(保険コンサルタントの方からのご紹介) 埼玉県さいたま市 |
私の実家は愛知県犬山市にあります。
そこに両親が住んでいましたが他界し、10年空家となってしまった戸建があります。
今住んでいる埼玉県からは距離が遠く、なかなか維持管理ができません。
相続をした際、弟は「自分では維持管理ができないからいらない」と言っていました。
荷物も大量に残っています。
そんな状態でも売却は可能でしょうか?
状況
・名鉄小牧線「羽黒」駅から徒歩20分弱
・建物は住友林業施工で築26年が経過
※メンテナンスは良好
・土地面積219㎡、建物面積139㎡
・室内には大量の残置物が放置
・隣地との境界標が不明
・市街化調整区域に立地
解決策
1. お客様との打ち合わせ
保険コンサルタントの方より戸建を売却希望のお客様(売主様)をご紹介いただけることになり、後日、ご紹介者の方と一緒にお客様と打ち合わせをしました。
お客様からは「愛知県犬山市にある実家を相続しました。両親が大切に、そして思い入れのある実家だったため10年間空家として何とか維持管理してきました。ただ、埼玉県に住んでいる私にとってそれはかなり大変でそろそろ手放したいと思っています。相続の時に弟との共有も考えましたが、弟は『維持管理ができないからいらない』と言っていました。建物内部には生活用品がそのまま残されています。その状態ですが、売却のお手伝いをしていただけないでしょうか」旨のお話をいただきました。
その際、お客様には予め用意した周辺の取引事例や売出物件などの資料で売却できた場合のおおよその目安金額をお伝えさせていただきました。
お客様からはその場で売却物件の売却に関するご依頼をいただけました。
2. 市役所などでの物件調査
お客様との打ち合わせ後、現地に行くためのスケジュール調整をし、後日、売却物件のある愛知県犬山市に。
犬山市は当社がある横浜市から約350kmのところにありました。
現地に行く際には調査道具などを積んだ社有車で夜中に出発し、仮眠をとりながら、市役所の開庁に併せて到着。
そして、調査を開始しました。
調査を進めていきわかったこと、それは売却物件は原則として建物の新築・増改築ができない市街化調整区域に位置していたことでした。
ただ、今回の売却物件については、市街化調整区域に指定される以前より「宅地」だったため、同規模同用途の建物であれば建築可能との見解を担当窓口よりヒアリングできました。
元々昭和44年頃に大規模開発された分譲地のため、調査においては、前述の市街化調整区域ということ以外売却に関して特に支障をきたすようなことは見受けられませんでした。
3. 現地調査と近隣住民へのアプローチ
役所調査を終え、現地に向かいました。
現地では、まず換気のために全ての窓を解放しました。
室内にはそのまま生活ができるくらいの大量の残置物が放置されていました。
冷蔵庫やテレビはもちろん、遺影まで残された状態でした。
ただ、建物自体は住友林業施工の和風建築物でリフォームをすればまだまだご利用いただけそうなほど、程度が良いものでした。
そして、売却活動のための間取図の作成、写真の撮影をし、隣地との境界標の確認もしました。
隣地との境界標については、塀などはあるものの全ての境界標が見当たりませんでした。
最後に隣地を含む、近隣住民の方々を訪問し、ご挨拶したのです。
その際に南側隣地の方より「このあたりはそこら中に空家が増えている。近くのスーパーだって閉店してしまった。お隣さんのご両親には本当にお世話になった。売却するのですか?お隣ということであれば、自分でも購入できるかちょっと検討をしてみます」旨のお話をいただくことができました。
4. 地元不動産会社にて相場のヒアリング
現地調査を終え、地元不動産会社数社を訪問。
その理由は、今回の売却物件の相場、購入者層、市場動向のヒアリングのためでした。
いくつかの不動産会社からヒアリングできた売却物件の相場観は残置物を撤去した状態で1,000~1,200万円というものでした。
※私の考えとしては物件の特性上もっと高い金額で売却できると確信していました
5. 売却活動の開始
現地での業務をひと通り終え、横浜に戻りました。
そして、売主様に調査結果、地元不動産会社からの相場観をご報告し、販売価格について打ち合わせをしました。
販売価格は地元不動産会社の相場観1,000~1,200万円でいきなり販売するのではなく、急いでいるわけではないのでちょっと強めの金額で売却活動を開始することで合意。
そして、当初販売価格は1,780万円となりました。
その理由は、売却価格は周辺の取引事例や売出物件と比較すると土地・建物の面積も広く、ハウスメーカー施工のうえメンテナンスも適切に行われていたからです。
販売価格決定後、すぐに隣地の方にも販売価格をお知らせをし、不動産会社専用サイト、各種不動産ポータルサイトに情報を掲載しました。
6. 契約に向けての諸条件の調整
数日後、隣地の方より「基本的に1,780万円で購入しようと思います。ただ、今後、犬山市内の他の不動産の売却もしたいので時間的に少し時間をいただけないか」というものでした。
そして、私のほうで隣地の方と打ち合わせをした結果、当初私が訪問した地元不動産会社 M社の方を隣地の方側の不動産会社としてはいっていただく段取りをしました。
その理由は、現地での打ち合わせや隣地の方の別物件の売却など地元不動産会社の方の協力があった方が、隣地の方にとって良いと考えたからです。
そして、地元不動産会社 M社の営業の方のお力添えをいただき、隣地の方との協議を進めていきました。
最終的に隣地の方からは販売価格そのままの1,780万円で売主様による境界標の明示、残置物の撤去を条件とした購入申込書をいただけました。
その間、M社の方に地元の土地家屋調査士の先生からの測量費用の見積り及び残置物撤去費用の見積もりの取得をお願いしました。
後日、売主様との打ち合わせの際には隣地の方の購入金額・条件に併せて各種見積もり金額をお伝えさせていただきました。
7. 売買契約の締結と測量の開始
数日後、売主様より「隣地の方との契約に向けて手続きを進めてほしい」旨のご連絡をいただき、契約に向けての準備を開始しました。
すでに調査も終わっていたため、契約書類の作成もすぐに終わり、売買契約自体はまず売主様に契約書にご署名いただき、後日、私がその契約書類をもって愛知県犬山市にあるM社で買主様にご署名いただくという持ち回り契約でした。(契約時は売主様は同席されませんでした)
なお、手付金については買主様より売主様指定口座に振込送金していただきました。
契約締結後は、予め見積もりを取得していた土地家屋調査士の先生のほうで測量、境界確定、境界標の設置作業をしていただきました。
特に境界についてのトラブルもありませんでした。
測量の後は、M社からご紹介いただいた業者による残置物の撤去作業でした。
そして、大量にあった残置物もきれいに撤去が完了したのです。
8. 残代金・お引渡し
測量、残置物の撤去を終え、お引渡し条件が整いました。
後日、売主様、買主様間で残代金・お引渡しの日程を調整し、その日が決定しました。
残代金・お引渡し当日は、M社に売主様、買主様、買主様指定の司法書士、M社 担当者、私と集合し、所有権移転登記の書類確認からスタート。
それが終わると全員で近くの金融機関に行き、残代金・固定資産税清算金のお振込み手続きを行いました。
そして、着金確認をし、当初、お客様とお会いしてから約6ヶ月という期間を経て、無事に全ての業務を完了することができました。
担当者からの一言
今回は、「お客様のために」でした。
売却物件は、横浜にある当社からかなり距離がある愛知県犬山市でした。
そんな中、南側隣地の方がその売却物件をお買い求めいただけたのですが、もし、私が契約から引渡しまで隣地の方の全てのご対応をしていた場合、遠隔地と言うことでどこかしたらお客様に不安を与えてしまったかもしれません。
もし、それでも当社がご対応して場合、当社は売主様、買主様の双方から仲介手数料を受領することができました。
ただ、それでは別案件の売却もある隣地の方にとってみたら、勝手が悪かったに違いありません。
そのため、私は「お客様」(売主様・買主様双方)のことを考慮し、地元不動産会社 M社に隣地の方(買主様)側の不動産会社として仲介に入っていただくよう協力を仰ぎました。
その結果、当社がいただける仲介手数料は売主様からだけ(買主様はM社に仲介手数料をお支払い)となりましたが、それでも隣地の方、つまり買主様には地元不動産会社が入ってくれたことによる安心感と別案件売却の際の勝手の良さを手に入れていただくことができました。
この決断に迷いは一切ありませんでした。
なお、もし、売主様が当初より地元不動産会社に売却の依頼をされていたとしたら、売却できた金額が1,000~1,200万円になっていたかもしれません。
そう考えるとどこの不動産会社に売却を任せるのか、誰に売却を任せるのかによって不動産の売却価格は大きく変わってくるんですね。
関係者のみなさま、本当にありがとうございました!