土地10社以上に売れないと言われた市街化調整区域の農地を手放したい!(埼玉県桶川市)
ご相談者: | T.H 様 東京都練馬区 |
埼玉県桶川市に15年前に相続で取得した農地があります。
実際に農地と言っても現状は雑木林みたくなっており、過去に何度かその雑木林の木が倒れ、隣の駐車場の車を損傷してしまい、車の修理代を負担したことがあります。
この農地を手放すために10社以上の不動産会社や行政書士の方に相談しましたが、全ての方から「市街化調整区域の農用地」のため、売れないと言われてしまいました。
私も60代半ばとなり、将来の相続のことを考えるとこの農地を子どもに残したくない。
何とか私の農地を手放せるべく、お手伝いいただけないでしょうか?
状況
・駅からバス便の県道沿いの土地
・土地面積327m2(建物の新築不可)
・市街化調整区域内の農地(農振農用地) ※現況:雑木林
・すでに複数の不動産会社・行政書士の方に相談済み
※全ての方から「売れない」と言われてしまった農地
・毎年使っていなくても固定資産税がかかる
・過去に売却物件の木が倒れ、隣地駐車場の車を損傷
※持ち続けることによる所有者責任リスク
解決策
1. お客様との打ち合わせ
今回のお客様は、インターネット経由にてお問い合わせをいただいたお客様でした。
そのご相談内容は、相続で取得された埼玉県桶川市の市街化調整区域にある農地を子どもに残したくないので「タダでもいいから手放したい」というものでした。
それは過去に台風などで現地の木が倒れ、隣の車に損害を与えてしまい、その修理代を負担したことが複数回あったからだそうです。
さらに状況をお聞きするとすでに多くの不動産会社、行政書士の先生に相談済みではあるものの、全ての方から売れないと言われてしまっている始末…。
その理由は、市街化調整区域の農地は基本的には農家もしくは農業法人しか購入できないため。
なお、今回の農地については、農振農用地といって駐車場や資材置き場にも転用ができない農地でした。
つまり…売れない土地?
ということで、私の方でこの農地売却のご依頼をお引き受けすることにしました。
そして、お客様の打ち合わせ時に調査にかかる各種委任状に押印をいただいたのです。
2. 行政での物件調査
お客様との打ち合わせ後、調査を開始しました。
まずは市役所などでの法令上の制限について。
その結果、お客様のお話の通り、売却物件は原則建物の建築ができず、他の用途に変更することもできない市街化調整区域の農振農用地でした…、これは確かに売りづらい…。
その他のことについては特に問題となるようなことはありませんでした。
3. 現地調査の実施
市役所などで法令上の制限を調査した後、現地調査を行いました。
現地は、バス通沿いに面しており、農地というより山林に近い状態でした。
樹木の一部は電線より高い位置まで伸びていました。
また、売却物件の境界標は見つかりませんでした。
そして、隣地には事業所と駐車場があり、複数の車が駐車されていました。
※以前売却物件の木が駐車場に停車中の車に倒れ、売主様は損害を賠償されたことがありました
4. 不動産の売却はまず隣地に聞け!
現地調査もひと通り終えたところで隣の事業所を訪問しました。
すると代表の方は不在だったものの、事務員さんが丁寧にご対応していただけました。
後日、代表の方にご連絡をさせていただいたのですが、その時の話で「隣の農地は以前にも所有者の方から買ってくれないかと相談がありました。うちの方でも色々と検討をしたのですが、最終的に農地だと買えないとなってしまい、そのままとなっています。」というお話をいただきました。
それに対し私は、「御社で購入できたら購入されますか?」とすかさずご質問をしました。
その際の先方さんからの回答は、「購入できるのであれば、検討する」というものでした。
ただ、市街化調整区域の農用地の売却は一筋縄ではいきません。
それは、通常農用地は、農家の方または農業法人しか購入することができないからです。
5. 知恵を絞る
売却物件の登記の地目と農業委員会の見解はいずれも農地(畑)でした。
この時点で今まで関わってきた不動産会社、行政書士の先生たちは「売れない」と諦めてしまったのでしょう。
ただ、往生際の悪い私は決して諦めませんでした。
私が白旗をあげるとお客様が今後もこの不動産を持ち続けるがため、悩み続けてしまうからです。
そして、私が目をつけたのが市役所の固定資産税課で取得できる評価証明書の地目。
幸いにも今回の売却物件の評価証明書上の地目はなぜか「山林」でした。
そのため、ここからなんとか状況を打破できないか考え始めたのです。
6. 土地家屋調査士の先生とのコラボレーション
今回の売却物件について、いつもお世話になっている土地家屋調査士の先生に何とかして売却する方法がないか意見をお願いしました。
土地家屋調査士の先生は、土地の境界や面積・地目に関する専門家。
当初は良い案が出てきませんでしたが、色々と検討を重ねていくうちにやはり評価証明書上の「山林」という地目がポイントとなりました。
そこで思いついたのが、「この土地はいつから農地なのか」ということでした。
そのため、私が国土地理院に依頼し、昭和25年以前、それ以降現在に至るまでの昔の航空写真を有償で購入しました。
すると…今回の売却物件が昭和25年以前より現状のまま山林であることが判明。
他にも色々と調べた結果、農地法の施行は昭和25年でした。
つまり、売却物件は登記の地目は農地ですが、実際には農地法施行前から山林だったのです。
そのため、土地家屋調査士の先生のお力添えもいただき、農業委員会とも協議、「売れない農地」とされていた売却物件の地目を見事「山林」に地目変更登記を完了することができたのです。
※地目変更登記についてはかなりレアなケースだったため、通常の2倍以上の時間を要しました
ただ、この時、農業委員会の方からは地目が農地から山林になれば、農用地の規制も解除され、自由に売買することができる旨、事前に見解を得ていました。
7. 再度、隣地に購入協議の申し入れ
農業委員会の許可なく売却できるようになった売却物件。
ただ、建物を建築できないのは以前と同じでした。
そのため、売却はしやすくなっても、買主がたくさんいるかどうかは別の話。
そこで私は以前訪問した隣地の事業所の代表者の方に購入いただけないか協議の申し入れをしました。
その結果、「現在、当社として購入するのか。購入する場合は幾らかになるかを検討し、連絡します」という回答を導き出すことに成功。
そして、後日いただい隣地代表の方からの回答は、「当社にて隣の土地(売却物件)を〇〇万円(100万円近く)で購入させていただきます」というものでした。
これには売主様もびっくり、売れないと言われていた不動産が有償でしかも、100万円近い金額で売却できるのですから。
8. 売買契約と引渡し
隣地事業所にて売却物件をご購入いただけることでお話がまとまってから売買契約書の作成に取り掛かりました。
そして、契約書の案分ができた時点で売主様、買主様に事前にご確認いただき、後日、買主様の事務所に集合し、売買契約の締結、引渡しを無事に終えることができました。
担当者からの一言
今回の案件のポイントは「知恵を絞る」でした。
今回の売却物件は、多くの方から「売れない農地」と言われた不動産でした。
ところが私は本当に農地なのか、という疑問から土地家屋調査士の先生のお力を借り、「売れない農地」から「売れる山林」に変えることができました。
この時、市役所の方や農業委員会の方々からは、「前例がない」と言われていました。
私にとっては「前例がないこと」はどうでもいいのです。
お客様と各専門家の方の力を借り、「前例」はつくっていけばいいのです。
そして、今回は農地を山林に変える前例を桶川市でつくることができました。
それに売れない農地を手放せなくてお悩みのお客様を有償で売却することでお客様のお悩みも解決できました。
不動産トラブルについては、様々な要素があります。
そして担当する方によっても知識、知恵の量が異なります。
そのため、もし不動産が売れなくて、手放せなくてお困りの方は、まずは一人で悩んでいるのではなく、とにかく誰かに助けを求めてみましょう!
売れない物件はありません。
そして、問題解決後のお客様の笑顔はやっぱり最高でした!
関係者のみなさま、本当にありがとうございました!