戸建田舎の空き家・レッドゾーンの農地・私道をとにかく手放したい!(熊本県天草市)
ご相談者: | S.H 様(ご所有者のお嬢様) 福島県郡山市 |
母が所有している田舎(熊本県天草市)の空き家、農地、私道があり、管理ができず困っています。
農地は傾斜地となっていて、過去の豪雨の際に土砂が崩れその清掃費用として十数万円負担したこともあります。
それと母が所有している不動産は、母の弟でIさんと共有で、そのIさんとはほとんど面識もありません。
母も高齢となり、万が一の時にはその不動産を相続せざるを得ません…。
母も私ももう何年も現地に行っていないため、現状が全くわかりません。
とにかくタダでもいいから手放したい、それだけです。
どうか助けてください。
状況
・駅からバス便の場所に立地
(バスもほとんどないエリア)
・空き家は老朽化しておりシロアリの被害が酷い
・農地は傾斜地となっており、農振農用地・
土砂災害特別警戒区域として指定されている
・過去に農地の土砂が崩れ、清掃費用を負担している
・何年も現地に行っておらず、状況がわからない
・共有者と面識がほとんどない
・土地に休眠担保が設定されている
・現存しない建物の登記が残ったままとなっている
解決策
1. お客様との打ち合わせと資料の受領
当初お客様よりメールでお問い合わせをいただき、複数回やり取りを行いました。
その後、お電話でご事情を伺ったところ、熊本県天草市に老朽化した空家、私道、農地を「タダでもいいから手放したい」という内容のお話でした。
各物件の状況をヒアリングし、後日、お客様から名寄帳等をいただき、売却に向けてお手伝いさせていただくことを決定しました。
2. 登記情報から判明したこと
現地調査前に登記情報をチェック。
するといくつか問題が判明。
・農地に全く知らない大正1年に設定された抵当権が残されたままとなっている
・ご所有者であるお母様の住所変更登記が未了
・現存しない建物の登記が残されたままとなっている
そして、司法書士の先生に依頼し、お母様の住所変更登記を実施。
続いて大正1年に設定された身に覚えのない抵当権は地元の司法書士の先生に依頼し、抹消。
ただ、この抵当権抹消登記も横浜周辺の先生に相談しても少し難しかったものが、地元の司法書士の先生ではローカルルールにてスムーズに抹消することができました。
3. 共有者との売却協議
売却希望不動産は全てご所有者であるお母様とお母様の弟さんとの共有名義でした。(お母様と弟さんは疎遠で連絡先もわかりませんでした)
持分だけで売却もできますが、物件的にもエリア的にもそれが難しかったため、売主様とともに共有者である弟さんの所在を調べることにしました。
すると…偶然にもインターネットで発見することができ、すぐにアプローチ。
結果、弟さんは7年前くらいに他界されていることが判明しました。(相続登記はされず、登記は弟さんのままでした)
登記が弟さんのままでは売却するにも売却できないため、弟さんの奥様とお嬢様に「この共有不動産を差し上げたい」旨、お伝えしました。
ただ、奥様とお嬢様から回答は「負担になる不動産ならいらない」、「持ち出しがないのであれば、売却に協力する」というお話をいただくことができました。
そこでまずは相続登記をしていただくようにお願い。
…が、待てど暮らせど弟さんの奥様への相続登記がされませんでした。
そして、再三、再四お願いをした結果、当初お願いをしてから約12年後、無事に共有者の名義が亡くなった弟さんの奥様に変更していただけました。
4. 役所調査の実施
共有者との協議を終え、いよいよ現地に物件調査。
朝一番の羽田発の飛行に乗り、熊本空港でレンタカーを借りてそこから車で1時間、かなり遠いところでした。
市役所、土木事務所などで空き家、私道、農地の調査を行いました。
そこで次のことが判明しました。
・農地は、農振農用地で他の用途に変更できない農地であること
・農地は、土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)に指定されていたこと
市役所で調査をした際に空家バンクの担当の方とお話ししましたが、天草市ではかなりの数の空き家が放置されたままの状態とのことでした。
処分不動産の中に私道があったため、道路課と協議した結果を売主様とシェアし、後日、私道の寄付を申し出、無事に寄付が受付けられました。
5. 現地調査の実施と近隣挨拶
役所調査を終え、そのまま現地調査を実施。
現地は国土調査がされていたため、境界も比較的容易にわかりました。
まずは空き家、室内に入ると長年閉め切っていたため、埃が舞い、そこら中に大量のシロアリとゴキブリの死骸が散乱…。
売主様曰く、以前この空き家を貸していたことがあったそうですが、最終的にはシロアリの被害が酷く、退去されてしまったそうです。(そこからずっと空き家の状態)
空き家では近隣の方にご挨拶も兼ねて、誰かこの不動産を引き受けてくれないかとお願いに回りました。
その結果、1組のお客様より良いご返事はいただけましたが、最終的にはご契約には至りませんでした。
続いて農地の現地へ。
農地は大半が傾斜地で、高いところで道路から10mくらいは上がっていました。
確かに豪雨があった際には土砂が道路に流れ出てしまいそうな状況。
ただ、そこからは田舎の田園風景、まさに絶景を見ることができました。
そして、近くを歩いていた方に農地売却のお話をしたところ、隣の農地を所有されている農家の方をご紹介いただくことができ、農地をお引受けいただけないかお願いしました。
ところがその結果もむなしく、農家の方からは「うちも農地の管理ができないので手放したい」と逆にご相談をいただいてしまうような状況でした。
6. 売主様のお世話になっている方へのご挨拶
現地調査を終えると売主様が地元でお世話になっていた方(S様)がいたため、ご挨拶に伺いました。
そこでは売主様とS様の良好な関係性をお聞きすることができました。
そして、最後に私が横浜から熊本県天草市に来た理由が、売主様が資産処分でお困りであることをお伝えし、どうにかお引取りいただけないかとお願いさせていただきました。
そして、S様からの回答は、「検討してみます」というものでした。
7. 地元不動産会社を訪問し、情報共有
S様のご自宅の訪問も終え、周辺相場の把握や協力していただける方を探すため、近くの不動産会社を訪問しました。
といっても近くと言っても車で30分のところにやっと不動産会社が1件ある程度で、決して「近く」はありませんでした。
ただ、その不動産会社は休みで、そこからさらに車を15分くらい走らせて次の不動産会社を訪問。
…が、ここも休み、というよりやっているのかやっていないのかわからない状態。
結局、地元不動産会社との情報共有はできませんでした…。
このように田舎の場合、不動産会社を探すのもひと苦労。
8. お世話になっている方との再三、再四のやり取り
S様への不動産引受けのお願いから数日、その方からのご返事は「娘とも相談しましたが、負担になってしまうので今回は引き受けは難しい」というものでした…。
ただ、私はそこで諦めず、もう一度、「なんとかお引受けいただきますようお願いいたします」とお願いをし、それとともに売主様に「売主様からの言葉でお願いしていただいた方が効果がある。ぜひH様からもお願いしてください」とお話しました。
そして、H様からもs様に直接ご連絡をいれていただき、不動産お引受けについてお願いしていただけました。
その結果、S様より「Hちゃんにお願いされちゃったら断れない。わかりました。うちのほうでお引受けします」という回答をいただくことができたのです。
9. 売買契約書の作成とお引渡し
買主様が決定したことを共有者であるI様にも報告。
そして、売買契約書の作成にとりかかりました。
契約書ができるとH様、I様、S様にそれぞれ事前に送付。
そこから農地法の3条許可申請をし、後日許可を取得。
(買主様であるS様は農家の方でした)
農地法の許可取得後、売買契約とお引渡し手続きを完了しました。
最終的にはタダでは贈与税の対象となるかもしれないという理由からも有償での売買となりました。
担当者からの一言
今回の案件のポイントは「売主様の言動」でした。
当初は、売主のH様は共有者のこともわからず、処分不動産には休眠担保があったり、そもそも農地だったりと様々なことがてんこ盛りの案件でした。
それでもH様は諦めず、私と共に一歩ずつ前進し、最後には全て不動産を手放すことができました。
その中でも今回の案件の成功の大きな要素は、H様ご自身が買主様であるお世話になったS様に対し、しっかりと「お願い」ができたことです。
「不動産を引き受けて欲しい、お願いします」ということは簡単な言葉ですが、いざ、言うタイミングになると言える方と言えない方がでてきます。
そう考えるとH様の不動産を買主様がお引受けいただけたのは偶然ではなく、必然だったのかもしれませんね。
共有者のI様もH様のお話に乗っかることができて、「良かった」の一言。
農地法の許可、私道の寄付、休眠担保の抹消などなどいろいろありましたが、一緒にお手伝いをさせていただく中で私自身の経験値を上げることができました。
あ、でも共有不動産は今回のように疎遠になってしまうと処分に困るのであまりおすすめはしません。
関係者のみなさま、本当にありがとうございました!