ご相談事例

戸建残置物が残っている築55年の廃屋を手放したい!(三重県松阪市)

ご相談者:M.I 様(メールでのお問い合わせ)
東京都目黒区

 三重県にある実家の土地・建物を処分したい(現在、空家状態)と考えています。
地元不動産会社にも相談していますが、動きがありません。
御社は難易度の高い物件を数多く扱ってらっしゃるとの評判を知り、ご連絡しました。
当方は都内在住のため、一度、詳しい物件の情報を持って、直接ご相談に伺いたいと思います。

状況

残置物が残っている築55年の廃屋を手放したい!(三重県松阪市) 状況
【所在】三重県松阪市松名瀬町
・駅からバス便の場所に立地
 (バスもあまりないエリア)
・周辺は平坦地で用水路脇に立地
・市街化調整区域内で周辺は農地に囲まれている
・建物内は家具も撤去されているが、車庫と倉庫内には
 大量の家具が残置
・道幅も狭く車1台が通行するのがやっと
・建物は55年が経過し、用水路側に沈下している
 ※倉庫は鍵すらない状態
・境界標が全て不明
・空家になって2年が経過
 ※海近くということもあり、建物が著しく劣化している
・鉄筋コンクリート造のため、解体するにも、
 リフォームするにも多額の費用がかかる

解決策

1. お客様との打ち合わせ

 当初お客様よりメールでお問い合わせをいただき、それから何回かメールでのやり取りをさせていただきました。
そして、後日、お客様に売却物件の資料をご持参の上、ご来店いただきました。
 その際になぜ現状のような状況となってしまったかをヒアリング。
聞くところによると以前売主様のご両親様が売却物件で鰻の養殖をされていたそうなのですが、体調を崩されてから、施設にご入所され、それから売却物件が空き家となってしまったそうです。
 その後、売主様がその売却物件を相続されたのですが、都内から売却物件のある三重県松阪市まではかなり距離があるため、現地に行くことができず、放置されてしまったそうです。
ただ、売主様は売却物件の他に目の前の農地も相続されたのですが、そこは太陽光発電事業者に先に売却されてしまったそうで、売却物件のみ残ってしまったという状況でした。
 売却物件は、鉄筋コンクリート造ということもあり、解体には400~600万円くらいかかってしまいそうで、リフォームするにも1,000万円以上かかってしまいそうな難あり物件でした。

 状況をお聞きしたところで当社以外の不動産会社では売却活動を行う不動産会社も少ないと思い、売却業務をお引受けすることにしました。
そして、売主様より売却物件の母家の鍵をお預かりし(倉庫の鍵はお持ちでなかったため)、売却に向けての準備を開始しました。

2. 現地確認の実施

 売主様との打ち合わせを終え、売却物件の調査に向けての準備にとりかりました。
後日、横浜から車で売却物件の現地、三重県松阪市に向けて出発。
現地に到着後は、まずは現地調査の実施。
境界標の有無を調べ、インフラや周辺環境のチェック。

 ちなみに境界標については、全て見つからず、インフラは水道は引込みがされているものの、浄化槽等排水施設は見当たりませんでした。
周辺環境を見渡す限り、農地と川、少し歩くと誰もいない海水浴場がありました。

 恐る恐る建物の玄関を開けると大きなコオロギ、ゴキブリ、大きなクモやどこから入ったのか蟹の死骸が多数ありました。
 床下は一部腐っており、天井には水染みが多数、窓を開けようにも錆びてて開けることができませんでした。
何より洗面所には大きなひび割れがあり、そのひび割れは外の景色が見えるくらいの幅のものでした。(建物は用水路側に沈下・傾斜していました)
 倉庫は鍵がなかったため(売主様もお持ちでなかったため)、窓から倉庫内に立ち入りましたが、こちらは昔の家具がそのまま残されており、少し不気味な様子でした。
車庫の方に行ってみるとそこには大量の残置物が放置されたままとなっていました。
用水路に隣接しており、海もすぐ近くのロケーションのため、しっかりと住める状態の時に売却をしていたら、そこそこの値段がついたと思うのですが、現状はかなり厳しい状況でした。
ただ、屋上からは目の前に海が広がるという素晴らしい景色でした。

3. 役所調査の実施

 現地調査の後は普段通り、市役所などで法令上の制限等の調査。
 大きく問題となることはなかったものの、唯一、売却物件が原則として建物の建築ができない「市街化調整区域」にあったということでした。
ただ、それでも建物が建てられた時期が市街化調整区域に指定される前だったため、「線引き前宅地」ということで一定規模・一定の用途の中で建物の新築は可能という状況でした。

4. 売却に向けて内覧会を実施

 物件調査を終え、一度横浜の会社に戻り、現地の状況・調査結果を売主様にご報告。
その後、売却物件の販売価格について打ち合わせをしました。
 売主様は当初「タダでもいいから手放したい」と仰られてはいたものの、実際売却活動を開始する段になり100万円からスタートすることに。
 そして、私の方で各種サイトに掲載し、SNSでも情報を発信しました。
すると、立地と写真映りの良さから多数のお問い合わせをいただくことができました。
中には「見ないでも買いたい」というお客様も複数組現れました。
ただ、物件が物件のため、見学しないでご購入いただくとゆくゆく揉めてしまう恐れのある物件だったため、売主様とも打ち合わせをし、私の方で現地内覧会を開催することになりました。

 そして、内覧会当日、合計で9組のお客様にご来場いただいた結果、1組のお客様(70代)より購入申込書をいただくことができました。
お問い合わせの際に「見ないでも買います」と仰られていたお客様は軒並み現地確認後、「やはりこの状況では買えない」という結果となりました。
ただ、残念なことに購入申込書をいただけたお客様より後日、お断りのご連絡をいただいてしまいました。
 その理由は「子供と物件購入について相談したら、お父さんが亡くなったら、その不動産が自分たち(お子様)のところに来てしまう。そうなると今の所有者の方と同様、手放せなくなってしまうから、買うのをやめて欲しいと言われた」とのことでした。

5. 諦めずに売却活動

 その後も状況は好転することもなく、ただ時間だけが過ぎていきました。
ただ、諦めることはせずに、売却するための方法、売れない理由を探る。
そこで再度売主様と協議をし、販売価格を変更することに。
そして100万円だった販売価格を短期決戦するために思い切って「1円」にしました。
すると再び数えきれないくらいのお問い合わせをいただきました。
そのため、再度現地内覧会を企画。
1円での現地内覧会には合計で39組のお客様がご来場され、その中で複数のお客様より購入申込書をいただくことができました。
※1円で購入しても多額の解体費用又はリフォーム費用がかかってしまうため、総額で1,000万円近くになってしまいます

6. 買主様の決定

 予想外に購入申込書が複数いただけたため、売主様にご報告、そしてどちらの購入希望者を買主様とするかをご検討いただきました。
※当社はあくまで仲介業者のため、買主様の決定権はありません

 そして、後日、売主様が悩みに悩まれた結果、買主様が決定しました。
私は買主様と残念ながら売主様とのご縁がなかった購入希望者の方に売主様の検討結果をご連絡しました。(この連絡が一番辛いです)
※買主様の購入申込書には「理想的な松名瀬町の家に出会う事ができました。子供と一緒に松名瀬町のお家を休日にDIYリフォームして、愛着や思い出の詰まった素敵な家にしたいと考えています。いつまでも末長く、大切に使わせていただきます」と記載されていました。

7. 契約準備から売買契約と引渡し

 買主様が決まったところで売買契約の締結に向けて、契約書等の作成に取り掛かりました。
そして、出来上がった契約書等を事前に売主様、買主様にご確認いただき、契約準備が整いました。
 契約は、関西にお住まいの買主様に当社までご足労いただき、売主様、買主様対面で売買契約の締結、所有権と鍵のお引渡しをとり行うことができました。
そして今後売却物件は、DIY好きな買主様がこの老朽化した建物をご家族全員でリフォームをし、素晴らしい家に再生される予定となっております。
それにしても、横浜から三重県松阪市までは遠かったぁ。

担当者からの一言

 今回の案件のポイントは「ロケーションの良さ」でした。

 いつも通り今回の売却物件も様々な面で問題を抱えており、地元不動産会社に相手にされない物件でした。
 解体するにも、リフォームするにも多額の費用がかかってしまう売主様にとってはお荷物不動産でした。
普通に考えると売却が困難な物件、それが今回売却することができた大きな理由は、海が目の前、用水路が脇にある「ロケーション」でした。
というのも、今回の買主様は元々海の近くに住みたいというご要望をお持ちの方で、さらにDIYがお好きなご家族でした。
 そのため、自分たちでリフォームをすることで工事費用を抑え、夢に一歩ずつ近づくことができます。
それに海に近い物件はなかなか出てきません。
つまり海に近いというロケーションが、今回売却の大きな要素となったのです。
今回も無事に売主様から買主様に不動産を繋ぐことができました。
今後、買主様によって素晴らしい家に生まれ変わるのが楽しみですね。
そして、松坂牛はやっぱり美味しかったです。

関係者のみなさま、本当にありがとうございました!