土地相続税対策のために複数の農用地・市街化農地を売却したい!(神奈川県秦野市)
ご相談者: | T.T 様(税理士の先生からのご紹介) 神奈川県秦野市 |
自宅周辺で先祖代々引き継いできた農地やバブル期に購入した農地があります。
税理士の先生と打ち合わせをしていた際にそういった農地が相続の時に相続税評価額が高く、実際に売れる金額が低くなってしまう可能性があるとお聞きしました。
私も高齢のため、家族と話をした結果、条件が良ければこのタイミングで売却をしたいと考えています。
リライトさんでお手伝いいただけないでしょうか。
状況
・農地は、市街化農地3ヶ所、市街化調整区域の農地2ヵ所
※農地法の届出・許可が必要
・駅からバス便の場所に立地
・一部境界が不明
・市街化農地には毎年高額な固定資産税がかかる
解決策
1. 税理士の先生同席の上でのお客様との打ち合わせ
当初、税理士の先生より「私のお客様で相続対策をご検討されている方がいるのでお手伝いいただきたい」旨のお話をいただきました。
詳しくお聞きするとお客様はご高齢の方で市街化区域や市街化調整区域で複数の農地を所有されており、お子様は耕作はされていても将来も全て管理していくことが難しいこと、市街化農地は固定資産税が高く農地として不向きなこと、何よりお客様が所有されている農地は実際に売却できる金額より相続税評価額の方が高いという相続不適格物件ででした。
そのため、後日、税理士の先生と一緒に神奈川県秦野市にあるお客様のご自宅を訪問しました。
お客様からのご相談内容は既に税理士の先生からお聞きしていた通りで「先祖代々所有してきた農地ですが、自分に万が一のことがあった場合、子供たちで管理していくのは難しい。実際に売却する金額よりも相続税評価額の方が高くなってしまうそうで、私に万が一のことが起こる前に対処した方がいいとお聞きしています。バブル期に多額の費用を投下し購入した農地もあるため、できるだけ高い金額で売却を考えています。」旨お話をお聞きしました。
そして、複数ご所有されている農地のうちご売却いただく農地、引き続き所有される農地をご家族でご検討いただくことで最初の打ち合わせを終えました。
2. 再度お客様との打ち合わせ、現地調査
後日、お客様よりご連絡をいただき、再度お客様のご自宅を伺いました。
そして、お客様がご所有されている農地のうち、今回ご売却いただく農地と引き続き所有される農地を確認。
お客様のご意向は市街化区域にある生産緑地に指定されていない農地3ヶ所と市街化調整区域にある2ヵ所の農地を売却したいというものでした。
それから売却予定農地の資料をお預かりし、売却に向けての準備を開始することに。
お客様のご自宅を出て、全物件の現地調査を実施。
売却物件は全てバス便エリアにある農地で、境界標は一部ないところもありましたが、現地確認において特に大きな問題となるようなことはありませんでした。
3. 法令上の制限の確認
売却のご依頼をいただいてからすぐに市役所などで法令上の制限の確認も実施。
売却物件が市街化農地、市街化調整区域にある農地だったため、売買に際して農地法の届出または許可が必要でした。
都市計画法、建築基準法、景観法、文化財保護法、自然公園法、開発条例など調査は多岐にわたりました。
農業委員会では市街化調整区域の農地が農業振興地域の農振農用地であることがわかり、下水道局では市街化農地に下水道を接続する際には受益者負担金が発生することが判明しました。
※農振農用地については農家の方か農業法人しか購入できない農地でした
4. 市街化農地 売却活動の開始
物件調査を終え、売却活動に向けて準備を開始しました。
売主様とも協議をし、まずは市街化農地3ヵ所から売却することに。
ただ、市街化農地売却については3ヵ所別々に売却をした方がいいのか、3ヵ所まとめて売却をした方がいいのか検討する必要がありました。
そのため、まずは3ヵ所まとめて購入していただける不動産会社がいないか探ることにしました。
秦野市内の不動産会社から、全国的に新築分譲住宅の販売をしている不動産会社、他にも伊勢原市、厚木市、海老名市、大和市などを主戦場としている不動産会社など多方面にご紹介を行いました。
5. 市街化農地の売却の契約と農地法の届出
数多くの不動産会社に向けて「3ヵ所の市街化農地をまとめて買ってほしい」と相談をした結果、「エリア的に事業化できない(買えない)」という不動産会社や「1つの市街化農地は購入できますが、2つは購入できない」など様々な回答をいただきました。
それでも紹介先不動産会社と交渉をしていった中で3つの市街化農地をまとめて7,000万円以上の金額をご提示いただけた不動産会社もお探しすることができたのです。
※地域の特性上、市街化農地3ヵ所まとめて購入できる不動産会社は少なかったのですが、5,000万円前後のご提示が数件あった中で7,000万円超は素晴らしい金額でした
6. 市街化農地売却の契約と測量の開始
売主様に市街化農地3ヵ所まとめての売却金額をお伝えし、まとめてご売却いただくか、個別にご売却いただくかをご検討いただきました。
ただ、過去の周辺の取引事例や売出物件を調べたところ、不動産会社の3ヵ所まとめての購入金額と個別に売り出した場合の想定売却金額はさほど変わらず、逆に不動産会社の購入金額の方が個別に売りに出した時よりも高いくらいでした。
そして、後日、売主様よりいただいた答えは「手を上げていただいている不動産会社に市街化農地3ヵ所をまとめて売却したいと思います」というものでした。
そのため、契約書類を作成し、売主様、買主様(不動産会社)に事前にご確認いただき、数日後に買主様の不動産会社の会社で売買契約を締結いただきました。
今回は、引渡し条件に確定測量図(隣地立会証明書の添付)があったため、売買契約締結後、土地家屋調査士という専門家に依頼し、測量に取り掛かりました。
7. 農地法の届出と市街化農地のお引渡し
測量開始から約3ヶ月、特に問題もなく売却農地の確定測量図(隣地立会証明書添付)の作製ができました。
それから、今回の農地が市街化農地だったため、売主様、買主様同席のうえ、秦野市農業委員会で農地法で定める農地転用届出書を提出しました。
こちらが後日無事に受理され、その受理証をもって市街化農地のお引渡し(残代金の授受・所有権の引渡し)を終えることができました。
8. 農用地の売却の開始
市街化農地の売却を終え、すぐに市街化調整区域、農業振興地域内の農振農用地の売却にとりかかりました。
ところが、農振農用地は、農業従事者である農家の方か農業法人しか購入ができません。
そのため、市街化調整区域の農地所有者は手放しなくても、農家の方の高齢化もあり、引受けてくれる農家・農業法人がいなくて、売却はもちろん、タダでも手放せないという状況が日本全国で見受けられます。
ところが売却活動を開始するとインターネット経由でたくさんのお問い合わせをいただくことができました。
ただ、その大半は農家の方ではなく、「家庭菜園として買えないか」、「車両置き場として使いたい」等購入したくても購入できない方(農家の方・農業法人以外の方)ばかりでした。(今回の農振農用地は農地転用ができない農地でした)
それでも諦めず、地道にご紹介を続けていった結果、1件のアツいお問い合わせをいただくことに成功しました。
そのお問い合わせは秦野市在住の農家の方でこれから農地を少しずつ広げていきたいというお客様でした。
後日お客様と一緒に現地を確認し、ご検討いただきました。
するとお客様より「今回の農地をぜひ購入させていただきたい」というお話をいただくことができたのです。
半ば諦めかけていた売主様も無事に売却の目処がつき、喜んでいただけました。
いつも通り、契約書類を事前に売主様、買主様にご確認いただき、後日、売主様のご自宅に集合し、売買契約の締結をしていただきました。
9. 農地法の3条許可の取得とお引渡し
今回は市街化調整区域の農振農用地だったため、お引渡しのために農地法の3条許可の取得が必要でした。
そのため、ご契約締結後、売主様、買主様が協力し、農地法の許可申請書を作成・提出していただきました。
すると1ヶ月後、無事にその許可申請が許可され、農地法の許可書を受理しました。
後日、再度、売主様のご自宅に買主様、司法書士の先生と集合し、残代金の授受及び所有権と農地のお引渡しを完了することができました。
担当者からの一言
今回の案件のポイントは「相続不適格物件」でした。
税理士の先生のご提案から始まった今回の案件、ご高齢のお客様は相続前に相続税評価額が高く、実際に売却できる金額が低いという相続不適格物件を売却することができました。
そして、お客様はこの売却により得た資金で将来相続の際の相続税納税に充てることができます。
また、先祖代々引き継いできた農地単体では売却した際の税金(譲渡所得税)が高額になってしまうものも、バブル期に多額の資金で購入した農振農用地と一緒に売却(農振農用地は取得金額と比較し大幅な損失)することで税金の内部通算という対応がとれ、売却時の税金を抑えることができたのです。
これがもし、市街化農地、農振農用地ともに売却をしてなかったら•••、それまでに固定資産税など多額のランニングコストがかかり、相続の際には多額の相続税もかかってしまうことになっていました。
そう考えると先祖代々の土地でも将来も含めその負担が大きい時には今回のお客様のように家族会議を開き、手放す時期などをご検討いただくのは非常に大切なことだと思います。
特に今回のお客様は全てを手放すのではなく、家族会議を開き、残すところは残すとされていた部分も大きかったのかもしれません。
誰しもそうですが、万が一の時はいつ訪れるかわかりません。
だからそのための準備をし、残された方々が困らないようにしておくことも親の務めなのかもしれませんね。
関係者のみなさま、本当にありがとうございました!