ご相談事例

土地昔崖崩れした急傾斜地を手放したい!(神奈川県横須賀市)

ご相談者:H.I 様
神奈川県横須賀市久里浜台

 2000年に父が仲の良かった知り合いの不動産会社の方より「息子名義で買ってあげなさい」と言われ、今回の土地を私名義で購入しました。
 私は不動産にあまり詳しくなく、今考えると今回の土地を購入したことを後悔しています…。
横須賀市より急斜面があるため、対策を指導され、市の補助金の申請は受けられそうですが、着工は順番待ちでいつになるかわかりません…。
そんな中、父も他界してしまいました…。

 私なりに考え、この土地を子供に引き継がせたくないため、一旦、母名義にしました。(もしもの時には相続放棄をするために)
母も80歳を超え、もし、可能でしたらこの土地を手放せる報告が出来たらと思っています。
ご協力よろしくお願いします。

状況

昔崖崩れした急傾斜地を手放したい!(神奈川県横須賀市) 状況
【所在】神奈川県横須賀市浦賀丘2丁目
・駅からギリギリ徒歩圏の丘の上にある傾斜地
・全体が急傾斜地でほぼ全てが土砂災害特別警戒区域
 (レッドゾーン)
・土地の一部が急傾斜地崩壊危険区域で、今後、
 その範囲が拡大予定
・隣接地に所有者不明土地がある
・住宅地隣接で過去にこの土地で崖崩れが発生した
・10年以上も前に売主様が倒木リスクをなくすために一部伐採
 ※100万円以上の費用をかけた
・横須賀市より崖を適切に管理するよう通知書が届いている
・境界標が一部不明

解決策

1. お客様との打ち合わせ

 当初、お客様より「昔購入した崖地の処分ができず困っている。知り合いの不動産会社にも相談したがダメでした…。タダでもいいから手放したい。」旨のメールをいただきました。
お問い合わせ内容を拝見した時点でかなりお困りの様子とわかりましたので後日、横須賀市にお住まいのお客様のご自宅にて打ち合わせをしました。

 お客様曰く、「元々は私の父が『子供の将来の資産になれば』と思い、私名義で購入した土地でした。」とのことでした。
ただ、お客様はその土地で過去に崖崩れが発生し、近隣住宅に大きな損害を与えたことを知り、かつ、今後も昨今のゲリラ豪雨で崖崩れが起きるのではないかと心配で何とかその土地を手放したいとお考えでした。
10年前くらいには大木が危ないからと言って100万円以上もかけて一部の木を伐採されたそうです。
 それでも知り合いの不動産会社で「売れなかった」ため、最悪の事態も想定し、相続放棄で手放せるようにとその土地の名義をお母様名義に変更されていました。

 お客様はその土地を手放すために自らいろいろと動かれていることがわかったため、当社にて売却のお手伝いをさせていただくことになりました。

2. 市役所調査でレッドゾーン!?

 お客様との打ち合わせ後は、そのまま市役所調査に。
市役所調査で判明したことは、今回の土地のほぼ全部が土砂災害特別警戒区域、俗にいうレッドゾーンという区域及び一部が急傾斜地崩壊危険区域に指定されていたこと。
 これらの区域に指定されていると建物を建築する際には許可を受けなければ建築ができません。
他には水道、下水、ガスの引込みもない土地でした。

3. 現地調査で「なかなか手強い」

 市役所調査の後、現地調査を実施。
 今回の土地面積は全部で659㎡、現地にはほんの少しだけ平らな部分(15㎥くらい)があり、そこはゴミ置場として利用されていました。
ただ、車も入らないような細い路地を奥に入っていたその奥は…急傾斜地で、昔崖崩れした傷跡が今でも残されていました。(北側隣地の土地がえぐれている状態でした)
それに南側隣地は何年も放置された空き家のようで鬱蒼としていました。
境界もほとんどなく、「これはなかなか手強い土地だ」というのが最初の印象でした。

4. 過去の情報共有と財産管理人

 現地調査を終え、お客様と打ち合わせをしていた際にお客様のもとに「急傾斜地崩壊危険区域の範囲拡大のための基礎調査」のお手紙が届きました。
 それは、お客様が何年も前からこの土地や隣地の崖が崩落することのないよう神奈川県に崖地保護の要望書を提出していたことによる崖地保護の第一歩として基礎調査を行政主体で測量を実施するというものでした。
管轄は横須賀土木事務所 急傾斜地課だったため、進捗状況の確認のため、その窓口に行き、詳細ヒアリングを行いました。
実際のところ、「現状としては神奈川県での崖地保護工事ができるかはわからない。もし、崖地保護工事ができた場合、相談地の土地はほぼ使える場所がなくなってしまいます」旨のお話をいただきました。

 その後、売主様とその内容等について打ち合わせをしていたところ、隣地が所有者不明土地であることが判明しました。(崖地保護の要望書を売主様がご提出された際には所有者不明土地について財産管理人の申立てをされていました)
 後日、再度現地に行った際にご近所の方より「この空き家の所有者は外国の方らしく、隣の墓地所有者も相続登記がされておらず、誰が所有者かわからないと土地家屋調査士の先生が言っていたよ」とお聞きしました。
さらに今回の物件の目の前の方を訪問し、ヒアリングしたところ、「またこの崖崩れるのではないかととても不安です」というお話もお聞きしました。

5. 反響は崖崩れが不安

 物件調査を終え、いざ、売却活動へ。
 もし、今回の土地に建物の建築をしようとすると崖崩れがしないよう何千万円もかけて対策をしなければなりません。
さらに建築基準法で定められている道路後退(セットバック)工事及びそれに付随する土留め工事も必要となるため、最終的に一体いくらかかるかわからない土地でした。
そのため、売主様と協議をし、販売価格は1円に。
 各種サイトに情報を掲載し、売却活動を開始すると…ちらほらとお問い合わせはいただくものの、最終的に「崖崩れが不安のため、今回は見送ります」とのことが多数でした。

6. 購入申込書の取得と売主様と一緒に契約前の現地確認

 売却活動から3週間くらいが経過した頃、「今回の崖地をぜひ購入したい」というお客様を同時に2組お探しすることができました。
 どちらの購入希望者を買主とするか売主様にご検討いただいたところ、色々と問題を抱えた土地のため、不動産に詳しい方にお譲りしたいということになりました。
そして、売主様が建築系のお仕事をされている購入希望者を買主として決定。
 買主様には崖崩れの情報や急傾斜地崩壊危険区域の基礎調査等の情報をシェアし、希望の利用用途で使えるかどうか、その他注意点等を横須賀土木事務所にもご連絡、ご相談いただくようお願いしました。(買主様の方でも事前に横須賀土木事務所の方と打ち合わせをしていただきました)
その後、物件が物件だったため、契約締結前に売主様、買主様、私と現地で集合し、売主様としての境界の認識、過去の状況、注意すること等を買主様に申送りをし、最後に契約日時を決定して、契約前の現地確認は終了。

7. 一括決済での売買契約

 契約締結前の現地調査を終え、私の方で契約書、重要事項説明書を予め売主様、買主様にお送りし、事前にその内容をご理解いただいたうえで売買契約日を迎えました。
 契約条件は、「境界非明示売買」(売主様は境界の明示をしなくても、測量もしなくていいですよというもの)、「契約不適合責任免責」(引渡し後に売主様も買主様も知らなかったことで買主様に損害が発生しても売主様はその損害を補償しませんよというもの)でした。
そして、契約金額が低額だったこともあり、手続きは売買契約と引渡しを同時に行う「一括決済」で行い、無事に契約が締結されました。
もちろん、今回も当社はお客様より報酬がいただけないボランティア案件でした。苦笑

担当者からの一言

 今回の案件のポイントは「とにかくチャレンジ」でした。

 今回の土地は、土砂災害特別警戒区域、急傾斜地崩壊危険区域の区域内でかつ、過去の崖崩れがあった急傾斜地でした。
最初は私も「なかなか手強い土地だな」と思いましたが、決して諦めることなくチャレンジした結果、2組の購入希望者をお探しすることができました。
不動産に限ったことではありませんが、「もうダメだと諦める」か「とにかくやってみようとチャレンジする」かのどちらかということですね。
ちなみに私は「百聞は一見に如かず」と思っているため、チャレンジする方なんですね。
それにしても無事に売却出来て、良かった、良かった。
売主様が今までこの土地を手放すために一生懸命活動されていたことが実りましたね。

関係者のみなさま、本当にありがとうございました!